![]() 美術館から見た大山の山。これが実はとんでもない仕掛けで見れます。 ![]() ![]() 美術館の上映室にある世界最大のレンズ、カメアオブスキュラ。でこれを使うと・・・。 ![]() 上映室内の壁に外の大山の姿が3メートルX5メートルぐらいで写し出されます。必見必見。 植田正治写真美術館は9年越しで訪れてみたかった場所。その思いを実現するにはあまりにも飛行機では味気なく、距離と時間も実感できない。新幹線とて同じだと思う。やはりはるばる米子、山陰まで来たと言う実感が欲しかった。またそこの空気感も味わいたかった。植田正治さんがどんな空気の中で人生をはぐくみ過ごされたのか少しでも疑似体験したかった。その為には列車かバイクだろうと思い、もちろん僕は後者を選択した。 中国道に入り、中国山地の山並みをバイクで走り抜けるとき、一つ山を廻り、一つ谷を跳び越すごとに空気が重厚でそれでいて妙にさくっとした少し乾いた感じになっていく。高速から見える田園地帯の家も関東や東北と違い、石垣の上に立つ重厚な家が多く(見方によっては小さなお城にも見える)なってくる。変なたとえだが、映画「犬神家の一族」に出てきそうな外観の家が多い。そして米子の手前で最後のトンネルを抜けると中国山地の濃い緑の香りの中に僅かに海の、それも日本海の少し冷たい乾いた潮の香りが混ざってきた。そして800キロの距離と時間を体験していま、建物の前に立つ。 写真は当たり前だが全てと言っていいくらい素晴らしかった。なにか一枚一枚大事にとられている感じがとても良く伝わってくる。そして撮るのと同じくらい大事にセレクションされて、さらに大事にプリントされている。写真も素晴らしかったが、それ以上に心に響いたのは植田さんの言葉だった。感動すると同時に考えさせられ身につまされるものがある。そのうちいくつかの主旨 をご紹介したい。 (1)フィルムが乾くか乾かないうちにあわててプリントをしない (2)ズームレンズに頼らない (3)賞を狙ったようなこざかしい作品を撮らない (4)作品が流行りものに流されないようにする こんなことを写真を見ながらコメントを読ませていただいているうちに身につまされることもあった。 (1)に関してはやはりオーストラリアから帰国後すぐに現像して、すぐに編集してセレクションするが大体1ヶ月ぐらいかけているが、でももっと帰国後、頭が冷却期間をおいてから作品のセレクションにかかるべきかなと考えさせられてしまった。とくに旅の後、熱くなっていると、撮影が大変だったからいい写真ということだけで選んでしまう傾向が強いのでやはり熟成する時間をもっと持ったほうがいいのではと考えてしまう。 (2)に関しては特に頭が下がる。特に風景ではワーキングディスタンスの関係でどうしてもズームレンズの依存度が高い。植田さんのご活躍されていた時代とは異なると思うが、先月も唯一の僕の写真の恩師から「50年カメラマンやってわかったことは、1本のレンズで突き詰めて撮影すること、ズームは使わないこと」と言うことを言われたばかりだった。とくにデジタルに関しては90%ズームレンズに頼っている。ただいま準備している人物モノクロ写真展に関しては1枚もズームレンズを使った作品をセレクトしていない。 (3)に関してはまさに同感です。依然僕のアシスタント君から、タスマニアでキャンプしているときに「あの~ご相談があるのですが?実は何か賞がとりたいのですが」と言われたことがある。その時「賞を撮るために写真を撮るなら、賞を意識して自分の作品としての撮影をするなら写真をやめたほうがいい。作品を撮った結果それに賞がついてくるのはいいと思うが逆は本末転倒だと思う。そういう気持ちだったら他のカメラマンのところでアシスタントをしたほうがいいのでは」と少し厳しいアドバイスをしたことがある。 (4)に関しては、昔モノクロ印画紙でWPタイプと言うのが発売されると多くのカメラマンはもうこれしかないとWP印画紙に飛びついた(僕もそのうちの一人でしたが)バライタ印画紙はもうおしまいだとみんな言っていた。デモ諧質感の感じで今またバライタ印画紙に戻ってきた。植田さんはこのことを皮肉っていた。 そして(1)~(4)のことを考えると今のアナログとデジタルに当てはまるのではと考えてしまう。もし植田正治さんがご存命だったら今のデジタル全盛時代をどう見るのだろうか? そして1時間半、僕は植田正治ワールドにどっぷり漬かり、そして楽しみリラックスし、写真家とは写真とは?について考えさせられた。8年ほど前一度だけ植田正治さんとお会いしてお話をさせていただいたことがある。98年新宿ペンタックスフォーラムで僕は「Heart of Desert」という個展を開催していた。オーストラリアの砂漠地帯の写真が中心だった。ある昼下がりとても上品な紳士の方が白い砂漠を食い入るようにご覧になっていた。その紳士の方は僕と目が合うと「これあなたが撮ったの?これいい写真だね~。いや~俺もあと20年若かったらここにいって写真撮りたいな!」と声をかけていただいた。失礼な話で僕は植田さんのお顔をよく存じ上げなかった、ただどこかで見たことある人だけど思いませないな~と困っていると、ペンタックスの方が「植田先生ご無沙汰しております、何か今回の写真展でご質問でも」と声をかけられて初めて植田正治さんだと分かった。恥ずかしい話だ。でも20分近く一生懸命オーストラリアの砂漠の話を聞いていただいた。その間ずーっとニコニコしていてとても腰が低いかただったのがとても印象的でした。その当時僕はまだフリーカメラマンのなり立てでとても恐縮しかつとても緊張したのを覚えている。今までに多くの巨匠と言う方にお会いしたがやはり皆さん腰がとても低かった。「この若造め」という態度は決してとられなかった。植田さんの写真のレベルに近づくなんてとてもおこがましいし、不可能に近いと思うが、だがこのようなとても紳士で誠実で腰の低いカメラマンに自分でもなれればとそれから思いなるべくそうなれるように心がけている。 植田さんが最後に個展会場から去られるとき「こんど僕の写真も見に来てくださいね」と言われ「必ずお伺いさせていただきます」とお別れのご挨拶をした。そして程なく植田正治さんは亡くなられてしまった。あのとき個展が終わりすぐ行かなかったことを8年間悔やんでしまった。だから今回はその8年越しの思いの実現だった。 天国の植田正治さんへ、少しお伺いするのが遅くなりましたがとても自分の生き方と作品を考えるのにいい機会を与えてくださってどうもありがとうございました。 植田正治さんの写真お好きでしたら是非行ってみて下さい。そして何かお感じいただけましたらクリックお願いいたしま
by masabike
| 2007-06-08 09:26
| 旅
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Comments(18)
相原さん、いい旅してきたようですね。
(1)〜(4)の言葉、なるほどと唸ってしまいます。 突き詰めた人の言葉は重たいですね。 植田正治さん、この写真のデジタル化、どう感じるのか知りたいです。 いいお話、ありがとうございました。
0
8年間の想いを実現することが出来たのですね。
植田正治さんのお言葉、そしてmasabikeさんの写真に対する想いを 拝見してあらためて写真について考えさせられました。 これからも勉強させてください。素敵なお話をありがとうございました。
こんにちは。
植田正治さんの写真は大好きです。 今のように写真を撮ってなかった頃 (自分には撮れないと思っていた頃) 大山に行った際に、植田正治写真美術館に偶然に入りました。 その作品のすばらしさに感動を覚えて、 それまで写真家といえば、 奈良の入江泰吉先生以外のお名前を存じ上げない私でしたが、 植田正治さんのお名前を知りました。 デジタルとなり一眼を十数年ぶりに手にし、 一番好むレンズが、当時に使っていたままの 50mm F1.4。 自然に入るとズームを使うのが自然だと思いますが、 使えるなら 50mm で撮りたいです。 フィルム・デジタル・ズーム、印画紙。 手段の変化は内容の変化を生むんだろうか・・・。 デジタルでも撮る側の気持ちが入らない様な上っ面の写真が心 に残るとは思えないです。 1~4のお言葉は、私には「本質を見失う事なかれ」と聞こえました。 このコメントで非常に生意気な事を言ってるのは理解しております。 1アマチュアの戯れ言だとお許し下さい。 しかし、8年越しの想いは、全てではないにしても私にも届きました。
masabikeさま
初めて相原さんの砂漠のお写真を拝見した時に、私の中で植田正治さんと重なっていました。 それが私的な感覚ではなく、こうして過去と現在の天国の植田氏とが相原さんに繋がっていたのだと知り、とても感嘆たる想いです。 「つゆのひとしずく」という短いフィルム作品がハイクオリティーでありながら、 彼の写真への静かな情熱を良く表現していて素晴らしかったです。 また、今回相原さんの写真家としてのメンタル的な部分を知る事も出来、大変興味深く拝読させて頂きました。 ありがとうございました。 *ねね
植田さんの写真美術館が、相原さんにとっ、そんなに意味のあるところだったなんて・・・・
ひとつの出会いが、自分を見つけるひとつのステップ。 私も相原さん経由で(自分で言ったときはこんな風な受け取り方はできませんでした)、植田さんの1-4を自分なりによく考えてみようと思います。
「写真に対する熱い思い」を見せて戴いた気がします。
こんばんは。初めまして。いつも訪問させていただいてます。
ユークラホワイトデューンの連作をうなりながら拝見してたのでしが、植田正治氏ならどう撮影されるだろうかと想像しました。 植田正治美術館を目指してバイクで山陰までこられるその途中のお話に思いが感じてました。 植田正治氏の作品は何かの本で知っていましたが、作品とお名前が一致したのはごく最近で、親しくさせていただいている方 から植田氏の写真の話を聞いてその作品を意識して見るようになりました。相原さんの強い、熱いお気持ちがとてもわかった ような気がしています(すいません勝手に)。 となりの県に住んでいますので今年の夏、大山に登った帰りに、恥ずかしながら初めて美術館に寄りたいと思っています。
まなぶさんへ
もし植田さんがあと10年長生きされたらどうお考えになったか興味深いです。こんどは恐山に行って聞いてみようかな・・・。
naturaltoneさんへ
ありがたいこめんと感謝です。こちらこそ勉強させていただきます。
NATUREAさんへ
そうですねまさにおっしゃるとおり「本質を見失うことなかれ」だと思います。でもNATUREAさんの写真本質とご自信の道を貫いているのでとても凄いと思います。
ねねさんへ
本当に植田正治さん写真家としてそして人間として偉大な方だったと思います。それを目標により切磋琢磨していきたいと思います。これからもよろしくお願いいたします。
csunyan2さんへ
植田正治さんと土門拳さんの御2人の写真美術館をこの1ヶ月で見てもっともっと撮影しなくてはと思っています。なにか新しいことが始まりそうな予感がします。
photoーartisanさんへ
写真への思いは年が経つにつれより強まります。コメントありがとうございます。
オクラガサンへ
コメントありがとうございます。美術館からお茶お飲みながら眺める大山は素晴らしいです
800kmの写真展巡礼の旅、お疲れ様でした。
私も数年前にこの美術館に行ったことがありました。 それは、確か植田正治さんが福山雅治さんのジャケット撮影をされた方、ぐらいの知識しかなかったように思います。 今度訪れる機会があったならば、もっと真剣に、じっくりと見たいと思います。
bon-bomさんへ
800Km楽しかったですがまだまだ続きがあります。乞うご期待。夕方に行くと大仙がといてもよいです。是非夕方いかれてください。そして日本海に魚を食べに行っていただければと思います
travelaterさんへ
旅は思い入れに始まり、そして更なる思い入れが次のたびのきっかけになると思います。旅とバイクと写真最高です。
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プロフィール
1958年東京都出身。日大法学部新聞学科卒。7年半のサラリーマン生活の後、パリダカールラリーを目指し、そのステップとしてオーストラリアへバイクでの砂漠縦断に行くが、そのままオーストラリアの虜になる。
現在はフリーカメラマンであり、フレンド・オブ・タスマニア(親善大使)としても活動中。 メールはこちらにお願いいたします。 masabikejp@yahoo.co.jp 写真のテクニカル的な質問には、クライアントさんとの関係もありお答えできない場合がございます。ご了承下さい。 ※ サイト内の写真の使用ならびに無断転用を禁じます。 Copyright©MASAAKI AIHARA ![]() ↑ブログランキング参加中。是非クリックして下さい。よろしくお願いします。 ◆相原正明オフィシャルHP New Photography coming Masaaki Aihara Official HP Masaaki Aihara Face book Face book 友達申請の時は必ずコメントお願いいたします。コメントがないと商人いたしまねます。 *相原正明作品収蔵のタスマニアクレイドルマウンテンThe Wilederness GalleryのHP http://wildernessgallery.cart.net.au/cat/2047951.html ◆相原の大型作品が 4点展示されています。 2007.4.27 OPEN モダンオーストラリアン レストラン「Salt」 http://www.pjgroup.jp/salt/ 新丸の内ビル6F (東京駅丸の内北口) ◆ご希望がありましたら、下記『ライフログ』より相原の作品をご購入いただけます。 タスマニアの四季を9万カットの中から厳選した写真集「静かな場所」と、13年間のオーストラリア撮影の総決算DVD写真集「虹大陸」がございます。 ライフログ
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