FUJIFILM X Series japan より転載 満月と富士

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【和の「写心」By Masaaki Aihara】
満月と富士
箱根 大観山より
FUJIFILM GFX100S FUJINON GF45-100mmF4 R LM OIS WR
FS/Velvia



風景写真の撮影で一番の山場は、言わずとしれた朝夕、特に日の出直前あるいは日の入り直後。いわゆるマジックアワー。その際に日の出日の入りの方角も大事ではあるが、太陽とは反対側の位置が実は一番肝だと僕は思う。淡いグラデーションが空に現れるからだ。実はこの淡いグラデーション、特にピンクからブルーへ続くグラデーションがいかに表現できるかが、一番大切。今回は満月の夜。夜明けに富士山の横に満月が沈むところを狙った。満月の日は、月の出、月入りが、ほぼ日の出日の入りと同時刻になるので、空の予想しないドラマが起きやすい。



だがここで問題が2つある。先ほどのピンク色からブルーのグラデーションの表現が、トーンジャンプせずに、なめらかに表現できるカメラはとても数少ない。しかも撮って出しでの表現はなおさらだ。さらに難しい条件がもう1つ。沈み行く満月の色再現がきちんとできること。満月は地表に近いと、火の玉のようなオレンジ色になる。この表現が難しい。フィルム時代はVelvia100やProvia100Fで意外としっかり表現できた。だがデジタルになり、オレンジが表現できるカメラが当初はなくてかなり悲しい思いをした。僕が知る限りではFUJIFILM GFX100Sは、その色再現ができる数少ないカメラだ。これはほかのGFX&Xシリーズにも当てはまる。この色再現を可能としたのは、富士フイルムの長年の色のプロファイリングデーターと、そのデーターをアレンジする審美眼を持った、優れた画質設計のエンジニアたちの努力と知恵の結晶である。
ただ現実問題では、現場の温度や湿度で、同じ光は二度とない。これが適正露出や正解のプリセットが存在しない訳につながる。満足する色やトーンを完成させるためには、基本になるフィルムシミュレーションから、Qボタンを使い、その場にふさわしい、コントラスト、彩度、露出補正を選ばなければならない。RAWデーターを使いゼロから色を作るのではなく、その場でなるべくストライクゾーンに追い込んでほしい。



僕は趣味でカレーを作る。家で代々のアシスタントさんやスタッフさんを呼んでカレーパーティーをするからだ。ある時、有名洋食のシェフの方を撮影する機会があった。何かのはずみで趣味のカレー作りの話になった。その時にシェフの方から「素人の人は、下手に香辛料を自分でブレンドするよりも、出来合いのカレーの素を買って、それに自分なりのアレンジを加えた方が上手に作れますよ」とアドバイスをいただいた。それ以来市販のカレー粉に、ワインや日本酒 ウスターソースを加えてカレー作りをして楽しんでいる。写真も同じ。RAWデーターから、自分で色を構築するのはほぼ不可能に近い。色のトーンカーブによってはプリントや印刷が難しいトーンもある。また人間の眼では、左目と右目で陰影や色が若干違って見える。それを知っていないと色の立体感も再現できない。富士フイルムの開発陣は、それを熟知して色を開発している。だからこそ僕らプロの写真家でもフィルムシミュレーションを信頼している。そしてフィルムシミュレーションで設定した、VelviaやASTIAに自分なりの色やトーンをトッピングしていく。ぜひ色はカメラを信頼してほしい。そして全神経をフレーミングとシャッターチャンスに集中してほしい。



だからこそ、今回の撮影でもフレーミングに集中できた。満月と富士山、2つの主題をどのように1つのフレーミングに収めて、画面の無駄な空間を省き、富士山の存在感を強調するか?というわけで、今回は真四角1:1のアスペクトを選び、富士山をセンターに配置。沈みゆく満月を、富士山に添えるような構図にした。当初4:3、あるいは3:2の構図を選んだ。だがどうも間延びしてしまい緊張感のない構図になった。そこで大胆に真四角にしたところ空のグラデーション 富士山の存在。満月の位置がどんぴしゃりしっくり来た。実はこのカットを撮影した後25:64のパノラマも撮影した。それもとても良い緊張感のある画面構成ができた。だが残念ながらパノラマのアスペクト比だとSNSにUPすると表示が小さくなり見えにくいので、今回は真四角を選んだ。フィルムシミュレーションと豊富なアスペクト比の組み合わせは、あなただけの世界観を誰でも構築できる。これから春に向かい被写体があふれるシーズン。ぜひ豊富なフィルムシミュレーションを使いこなしてほしい。きっとあなただけのレシピが見つかるはずだ。
Photography by Masaaki Aihara



相原正明撮りおろしのkoji note From OITA 相原正明 フォトエッセイ  ぜひお楽しみください


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by masabike | 2026-03-23 09:12 | 日本風景 | Comments(0)
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