思い出の光と時間 FUJIFILM X Series facebookより

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【和の「写心」By Masaaki Aihara】
「思い出の光と時間」
旧遷喬尋常小学校 岡山県真庭市
FUJIFILM X-T4 + FUJINON XF35mm F1.4 WB電球



築120年の小学校の木造校舎。1つ1つの教室、廊下の床板が歴史と思い出。歩いていると120年前の子供たちの足音と声が聞こえてくる。

今回は岡山県真庭市で開催された日本国際観光映像祭に審査員として参加させていただいた。そもそも日本国際観光映像祭とは?今いろいろな国や地域でオーバーツーリズムが問題になっている。そこで知られていない地域や国あるいはステレオタイプで見られている地域や場所を、このような新たな場所や視点もあるということを紹介してオーバーツーリズムを防止するとともに、多くの方に世界中を旅してもらい、友達を作り、平和になればよいとそんなことで始まった。世界数か国で開催され、最後は年間グランプリ作品を選出する。



日本ではコロナ禍前に始まったこのイベントも今回で7回目。毎回写真家としての視点で見て、観光映像作品の審査をさせて頂いている。僕が審査させていただくのは、フレーミング、ライティング、編集方法、音響・音楽との関連などなどである。動画も写真も基本は同じ。瞬間を切り取った映像が1コマで終わるのが写真。それが時系列で表現していくのが動画だと考えている。今回のイベント会場は古い木造校舎。真庭市にある旧遷喬尋常小学校、築120年。国の重要文化財。オスカーを取った山崎監督の「三丁目の夕日 Always」のロケでも使われている重厚な建物。すべてのパーツが歴史だった。校内をゆっくり見学。僕がいちばん眼についたのは、螺旋状の1階から2階につづく階段。学校の階段で螺旋状は珍しい。さざえ堂のような階段だった。


実は僕は階段フェチ。東京の国立西洋美術館のル・コルビュジエのデザインの階段や長野県・青木村のますや旅館の階段など、今までGFX&Xでじっくり階段を狙ってきた。今回もこの階段が、僕の琴線に触れた。外光が少しだけ差し込む。1点を中心にきれいに階段の板がレイアウトされている。この1点技法のような階段の美しさを出すために1:1のアスペクト比にした。そして絞りをf5.6に。当初 f16まで絞った。そうしたら硬い絵となり、木のやさしさが出なかった。被写界深度を鑑みf5.6に設定。だが撮った写真には木造のぬくもりと120年の時間が出てこない。

悩んだ。困った。その時にふと思い出したのが、友人の写真家 内田ユキオさんの言葉だった「相原さん、フィルムシミュレーションのセピアって試したことありますか?他のメーカーに比べて超いいですよ」だった。フィルムシミュレーション(FS)でセピアは今まで使ったことが無い。何となく古い感じを出すのにセピアを使うのはあざとい感じがして、フィルム時代からあまり好きになれなかった。だが今回は差し込む反射した光の柔らかさ、木目の美しさも手伝い使ってみることに。勇気を出して禁断の扉を開けるようにFSでセピアを選択。シャドー部をしめるためにWBを電球に設定。あと光の柔らかさと、過ぎ去った時間のイメージを出すために、シャープネスを-1にした。トーンカーブはいじらない。そして露出は+0.3から-2まで1/3ステップで撮影。また踏板が集まる1点を画面のどこに持ってくるかで表現が変わるので、合計40枚ぐらい撮影した。EVFと背面モニターを見て、自分の今まで抱いていたセピア色に対しての概念が変わった。イメージしていた安っぽいセピアではなく、時間が歴史を熟成して出来上がった色調を見事に再現してくれた。


僕の中でセピア=安っぽいエフェクトという概念は崩れ去った。そして同時に校舎全体はFUJIFILM GFX100SでFS  PROVIA/スタンダードで撮影をした。イメージの撮影と同時に、重要文化財というのを1億画素の緻密さで、外壁の板の1枚1枚まで克明にアーカイブとして記録しておくことも大切であることを忘れてはならない。X&GFXこの2つのシリーズを使いこなすことで写真としての最も大切な使命である記録をこなすことができる。記憶と記録、2つの世界をXとGFXは表現してくれる。


これから春から初夏に向かい、日本列島は様々な光に覆われる。普段使わないFSのメニューもあるはず。新しい季節・新しい色にチャレンジすることも大切である。それと同時に客観的な記録として写真を残すことも。今回の撮影でXとGFXから教えてもらった。



協力 日本国際観光映像祭 真庭市観光局



Photography by Masaaki Aihara



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by masabike | 2025-04-02 17:08 | 日本風景 | Comments(0)
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