霧氷輝光図  FUJIFILM様 X Series facebookより



霧氷輝光図  FUJIFILM様 X Series facebookより_f0050534_18010332.jpg


【和の「写心」By Masaaki Aihara】


「霧氷輝光図」北海道 十勝 十勝三股


FUJIFILM GFX100S + FUJINON GF100-200mmF5.6 R LM OIS WR
Leofoto三脚 ギア雲台使用





「指が痛くてボタンが操作できない」。闇が迫る八ヶ岳山麓で同行してくれている男性が寒い中やっと声を振り絞り出し言葉を発した。彼は富士フイルムのXシリーズ開発エンジニア。カメラの開発のためのフィールドテストで、僕の撮影に同行してくれた。以前にカメラ開発会議で、僕が新製品の試作機を触り「このボタンは寒いと操作できない」と意見を伝えると「いや大丈夫です。実験室で低温テストして大丈夫でしたから」と言われた。だが僕は「実験室でしょ?しかも風もないし。本当のフィールドだったら無理ですよ」と意見を言った。その結果、厳冬の山に行き日没まで1日撮影してテストしようということで、2月の八ヶ岳にエンジニアスタッフ2名に同行を願った。
その結果が、彼の「ボタンが操作できない」ということになった。


ちょうど3月頭、カメラ映像写真業界の最大イベントCP+2025が終了した。どのメーカーも最新機種を投入してのお披露目。カタログ上のハイスペックな数値が当然どのメーカーもしのぎあう。だが一番大切なことはカタログスペックに出てこないこと。フィールドテストならびに最前線の現場の写真家からのフィードバックをいかに最適にカメラに搭載あるいは機能するようにするかが大事だ。カメラを最前線で使う写真家はテストパイロット。写真家からテスト情報あるいは経験値をフィードバックされるエンジニアたちは、さしずめ地上整備員。だから写真家はエンジニアにわかる言語に置き換えて、適切に客観的に伝えなければならない。その結果、素晴らしいカメラあるいはレンズができあがる。GFX&Xシリーズはその賜物でもある。単にスペックだけをクリアしても素晴らしいカメラやレンズは生まれない。特にその中でも画質の色や諧調・奥行感などは数値化するのが難しい官能的部分。だがそこが一番大切。しばしばGFXを使っていると、6000万画素のフルサイズ機で画質的には充分ではないか?と聞かれる。その方がより機動性が良いのにとも言われる。だがラージフォーマットのGFXシリーズは画素数のスペックはさほど重要ではないと僕は考える。なぜならばラージフォーマットだからこそ表現出来る、不思議な立体感と遠近感、そして質感。画素数と言うスペックでは言い表せない何かがそこに介在する。色、操作性、機動性、すべてにおいてGFX&Xシリーズはスペックでは言えない大切なことを満載している。それは一瞬の光を求める、光の狩人たちのために作り込んでいる証だ。




マイナス21℃の朝。深呼吸すると肺が凍りつきそうだ。カメラは吐く息で白い塊と化す。メーカーが保証する下限温度をはるかに下回る温度。だが光と時間という二度と戻らない獲物を求めて、GFX100SとGF100-200mmのレンズは寒さと戦っている。半分凍りついているEVFファインダーには肉眼で見るよりもはるかに緻密と感じさせる光景が映し出されている。光の変化にあわせて、露出・フィルムシミュレーション・WBを刻々と変化させていく。カメラのボタンを操作する指は寒さで痛い。だが操作は確実にできる。もし10年以上前のあの日に戻れるならば、日が暮れた八ヶ岳でボタンが操作できないと嘆いていたエンジニアの耳元に「10年後、あなたたちのカメラはもっと過酷な環境で立派に動いている。人生のマイルポストになる写真が撮れているよ」とささやき、この朝の写真を見せてあげたい。だから頑張って未来を見てカメラを!レンズを作って!と励ましてあげたい。そして今日も研究所のどこかで、フィールドのどこかで、この地球のどこかで、2026年あるいは2030年のCP+を見据えて、スペックに出ないことを心血注いで研究しているエンジニアたちがいるに違いない。僕はその人たちが笑顔になる写真が撮りたい。



Photography by Masaaki Aihara






相原正明撮りおろしのkoji note From OITA 相原正明 フォトエッセイ  ぜひお楽しみください





富士フイルムさんのX シリーズフェイスブクで 和の写心(毎週水曜日更新)を連載中。「イイネ」押してくださいね



ブログランキング応援クリックお願いします。応援たくさんしていただけるとたくさん写真がアップされます 笑
下のランキングバナーをクリックしてください。












by masabike | 2025-03-05 18:04 | 日本風景 | Comments(0)
<< スペックに出ないところ LUM... 一番列車 宗谷本線 抜海駅 b... >>