家路 FUJIFILM X Series facebookより転載

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【和の「写心」By Masaaki Aihara】
「家路」栃木県 渡良瀬遊水地
FUJIFILM X-T4+FUJINON XF100-400mmF4.5-5.6 R LM OIS WR



冬の北関東、乾いた冷たい風が吹く。体感的には北海道並に寒く感じる。そんな乾いた空気のクリアーな光と色が好きで、冬になるといつも渡良瀬遊水地に訪れる。
日没時に、富士山を点景に入れ逆光に映える葦原を狙っていた。その時、家路につく野鳥たちの群れがやってきた。それまでGFX100S+FUJINON GF45-100mmF4 R LM OIS WRで狙っていた機材を、X-T4+FUJINON XF100-400mmF4.5-5.6 R LM OIS WRに変えた。フィルムシミュレーションはVelvia 。日没後で遠景の色のメリハリが少し弱かったのでcolorを+1に設定。鳥たちの群れが次から次と富士山を背景にして家路を急ぐ。撮った写真を確認すると、花札の絵柄みたいだった笑。それは誰もがイメージする「和」という雰囲気。


「和」というテーマで写真コンテストの審査をして気がついたことがあった。被写体がとてもステレオタイプであるということ。多くの被写体が、竹林、お寺、古民家、池の鯉などが多い。一緒に審査をしていた、ある著名な作家の方が「和と言ったらみんな同じ被写体、どうして茶碗や下駄、あるいは和食とか他の物を考えつかないのだろう。とても短絡的で残念」と言っていたのが印象的だった。和というのは物理的な物だけではなく、日本人独特の視点・美意識だと思う。特に「間」という空間の処理にあると思う。それは海外に出て初めて実感できた。西洋のアートでは、フレームの中は素材や色で埋め尽くしていく傾向が多い。素材の足し算の文化。それに反して日本画等見ていただくとお判りのように、素材をシンプルにし、「間」という空間を大切にしている。何もない空間が、実は見えない何かを融合しているとても大切な空間。僕は西洋に対して引き算の文化と考えている。西洋のアートでは、黄金分割比のように数値化図式化して説明していくものが多い。だが「間」は数値化できないと感じる。
以前もある海外でのワークショップで、現地の方から「何%の何もない空間を設定すると、「間」になるのか?」と聞かれた。僕はあんばい(Feeling)なので数値化できない」と答えると、相手の方は「それは禅から来ているのか?」と。往々にして、日本の理解が難しい文化に出会うと、海外の方は「禅」なのかと聞かれることが多い。僕は禅というよりも日本古来のfeeling と答えスターウォーズのフォースみたいな感覚、と言ったら相手は「君はジェダイなのか?フォースが使えるのか?」聞いて大笑いになったことがあった。 話は少しそれたが、この日本人独特の空間と色彩感覚が僕は「和」だと思う。特に掛け軸のような、縦長の絵で「間」をとって絵造り、あるいは写真作品を作る事には欧米人にとってはかなり難しい。




フィルム時代からパノラマカメラTX1で、パノラマ縦構図で掛け軸風の作品を撮っていた。「間」という空間を存分に使った作品群。この作品群は2004年ドイツ・フォトキナの富士フイルムブース “Photo Is”で約50点の作品群として展示し、世界で大好評となるとともに、富士フイルムの印象を、フォトキナ出展の他の数百のメーカーと差別化に成功した。




GFXシリーズを作るとき、すでに生産中止となったパノラマカメラTX1の代わりとなるものが欲しくて、開発陣にお願いして、どうしてもパノラマモードを搭載してほしい懇願したのも、「間」をとった掛け軸風、和の作品を作りたかったからだ。
そして実は海外に行けば行くほど、自分の日本人としてのアイデンティティーを自覚する。海外在住の日本人の方が、より日本的な傾向や趣味を目指すことも多い。友人でハリウッドに住む日本人クリエーターも、アメリカに移住してから三味線をはじめて驚かされた。実はこの外に行って気が付く日本的視点あるいは美意識はとても大切。だから日本の風景を撮りたい、日本の風土を撮りたいという方は、長期でなくても構わない、ハワイでもオーストラリア、パリでもよいので生活と写真撮影を体験してきてほしい。1週間でも構わない。きっと帰国して、いつも見ていた日本の風景に向き合ったとき、今まで気が付かなかった何かに気が付くはずだ。撮り手が変化する、これが写真作品に一番影響する。GFXやXシリーズはそのお手伝いを必ずしてくれる。日本の風景をしっかり見るために、是非外の世界での体験と視点を持ってほしい。
その時あなたの「和」の写真は、表面的な捉え方から、奥深い表現に劇的に変わるはずだ。





相原正明撮りおろしのkoji note From OITA 相原正明 フォトエッセイ  ぜひお楽しみください





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by masabike | 2025-02-08 07:05 | 日本風景 | Comments(0)
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