FUJIFILM X Series facebookより転載  御輿来海岸 点景


FUJIFILM X Series facebookより転載  御輿来海岸 点景_f0050534_17304346.jpg
【和の「写心」By Masaaki Aihara】
「点景」熊本県 宇土市御輿来海岸(おこしきかいがん) 有明海
風景写真の撮影に行くとき、いろいろなレンズを持って行く。その理由は足元から遠景までいろいろな視点で撮るためと、特に風景の場合、撮影位置の制約がある場合が多く、近づいたり、離れたりすることが不可能な場合が多いからだ。それを考慮して多くのレンズを持参する。そしてさらに、いろいろな条件も考慮するとさらに機材は増える。例えば夜の風景も撮りたいので明るい単焦点も欲しい、などなど書けばきりがない。
今回の作品は有明海の御輿来海岸。干満の差でできる干潟が有名な撮影スポット。不思議な名前の海岸だが、現地のホームページによると、景行天皇が九州遠征の際にあまりの美しさに御輿を停めて見入ったことから、その名前が付いたと言われている。偶然にも僕の元アシスタントY君が、この海岸の展望台の下に実家があり「相原さん、一度でよいから来て撮影してみてくださいよ。すごい風景ですよ」と言われて訪れた。




撮影は12月の満月の日。昼間の撮影と、満月の明かりでの撮影を考えて機材を選んで持ってきた
FUJIFILM GFX 50S、GF23mmF4 R LM WR、GF32-64mmF4 R LM WR、GF100-200mmF5.6 R LM OIS WR、FUJIFILM X-H1、XF16mmF1.4 R WR、XF35mmF1.4 R、XF16-55mmF2.8 R LM WR、XF50-140mmF2.8 R LM OIS WR、XF100-400mmF4.5-5.6 R LM OIS Wだった。ただ正直に言えば、自分の視点の好みならばほとんどの撮影はGFXシリーズでいえばGF32-64mm、XシリーズでいえばXF16-55mmで間に合ってしまう。では何のためにそれほど機材を持って行くのか?前出した条件もあるがここ1発、少し変化を効かせたいときである。お寿司でいえば「ワサビ」みたいなもの。違う視点で作品を見る人に「おや?」と思わせる時にどうしても標準ズームレンズではカバーできない視点あるいは、ボケ味や明るい開放値が必要となる。




今回の作品は日没3時間ぐらい前に現地入りした(初めての場所なので、夜景の撮影に下調べも備え、早めに現地入り)。それでも早くも数人の方が三脚を立てて日没を待っている。僕もそれに倣い三脚を立て撮影準備。遅い午後の光になるころ、干潟を漁師さんたちが歩きわまっていた。何か貝か小魚でも捕まえているのだろうか、盛んに干潟の上を歩き回る。その時、頭の中に絵コンテが浮かんだ。遅い午後の光の強烈なコントラストの干潟、その中を歩く漁師の方を点景としてモノクロで干潟の大きさと美しさを表現しようと。三脚にセットしていたGFX 50S+ GF32-64mmからX-H1+XF100-400mmにカメラをチェンジした。隣で撮っていたアマチュアの方は「この人、こんな超望遠レンズ出して何しているのだろう」という顔だった。そう、まわりの方の多くは広角系あるいは標準系ズームしか持っていない様子だった。だから誰も被写体に気づいていないし、撮ろうとしていない。ファインダーを覗くと影絵のように干潟の上の漁師の方が、逆光で浮かび上がっていた。フィルムシミュレーションをACROS+Rモードに設定して、コントラストを強めにした。そしてもちろんシャドー部の諧調を絞めるためにWBは電球モードにした。漁師の方がまるで踊るように、干潟の上を歩き回る。おかげでとてもフォトジェニックな作品が撮れた。その後再びカメラをGFX 50Sに戻して日没から夜明けまで撮影した。この日夕刻から夜明けまでに使用したレンズはGFXでGF32-64mm、GF100-200mm、XではXF16mm、XF50-140mm、XF100-400mmだった。12月の満月の日、変化する干潟を狙い夢のような時間が過ぎ去った。撮影が終わった後、僕はY君の御実家にご挨拶に伺い、お父様の御仏前に「息子さんを預からせていただきました」とご挨拶をさせていただいた。


以前あるカメラメーカーのサービスセンターで偶然彼に会った。最初はパーテーション越しで分からなかった。だがメーカーの方が「いつもたくさんカメラとレンズを持っていますよね」と言われ「ええうちの師匠から、いろいろな視点で撮れるように、レンズはたくさんそろえろといつも言われているので」という声にハッとして、パーテーションの向こうを覗き込むとY君だった。ほぼ素人でうちに弟子入りして、プロの写真家になったY君。撮影現場を去るとき、その話を思い出し、この素晴らしい風景の中で育ち、そして僕も元に来てくれたのかと、とてもうれしくなった。レンズのバリエーションをそろえることは大切であることをもう一度かみしめた。



12月16日 FUJIFILM House of Photographyで写真家・渡辺真由美さんとトークイベント開催します
フジカラー北陸 ギャラリーかなざわで個展12月10日まで開催中です


相原正明撮りおろしのkoji note From OITA 相原正明 フォトエッセイ  ぜひお楽しみください





富士フイルムさんのX シリーズフェイスブクで 和の写心(毎週水曜日更新)を連載中。「イイネ」押してくださいね



ブログランキング応援クリックお願いします。応援たくさんしていただけるとたくさん写真がアップされます 笑
下のランキングバナーをクリックしてください。






by masabike | 2024-12-04 17:32 | 日本風景 | Comments(0)
<< 世界一空気が綺麗な森 森に抱かれて タスマニア >>