埠頭を渡る風  FUJIFILM X Series facebookより転載



埠頭を渡る風  FUJIFILM X Series facebookより転載_f0050534_11284387.jpg

【和の「写心」By Masaaki Aihara】
「埠頭を渡る風」横浜
FUJIFILM X-T4 + FUJINON XF35mmF1.4 R Velvia mode WB/晴れ
横浜での仕事の後、ハンマーヘッド公園と呼ばれる、港が見渡せる公園に行った。陽が沈んだ後、初秋の、でもまだすこし夏の残り香がする潮風に身をゆだねた。気が付くとユーミンの「埠頭を渡る風」が頭の中でリフレインされていた。写真と音楽はとても大切な関係。

オーストラリアの荒野で、夜明け前に撮影に行くときは、いつもQueenの”We are the champions”を聴いてテンションを上げ気合を入れていく。そして撮影が終わり星空の元のキャンプではリンダ・ロンシュタットの“星に願いを”を聴き、明日もよい光がきますようにと天に願いをかける。撮影ばかりではなく事務所で写真を選ぶときには、クラシックあるいはオペラを聴くことが多い。音楽によって写真を選ぶリズムがだいぶ変わる。音はとても大切。だからこそ音響システムにはこだわる。事務所ではRogersとB&Wという2つの英国製のスピーカーを使っている。どちらも録音スタジオ用のモニタースピーカーで長時間聴いても疲れない。写真編集で朝から晩まで、編集のため部屋にこもっている間、音楽を流しているので大切なこと。


昨年、あるオーディオメーカーの最高責任者の方にお会いする機会があった。女性の方で、しかもジャズプレーヤー。最高責任者がジャズプレーヤー?どうしてなのだろう。その最高責任者を、ご紹介していただいた方に理由を尋ねると「彼女は絶対音感の持ち主。オーディオは楽器。だからコンピューターなどで計測した数値通りに設計しても人間の耳で聞いたらダメなことも多い。最後は人間の耳で聞いて、製品の良い悪い、時にはダメ出しもしなければならない。だから最高責任者は音楽家で絶対音感の耳を持っていないと楽器として良いオーディオ、特にスピーカーは設計できない」と説明され納得した。実は写真も同じ。PROVIA 100Fというフィルムから始まり、現在のGFX&Xシリーズまで富士フイルムの仕事にかかわらせていただいている。そして何度もフィルムやデジタルカメラの色を設計するエンジニアの方とお会いしている。その時に色を肉眼で精査する感覚が研ぎ澄まされていることに驚かされる。音楽の絶対音感に例えるならば、色のエンジニアの方たちは「絶対色感の眼」を持っている。色のバランスはとても繊細。そして色で大切なことは「心象色」、心の中でどう感じるか?これはコンピューターや計測機器だけでの精査では、色を完成させることはできない。そんな色の匠たちが作り上げる色再現がGFX&Xシリーズのフィルムシミュレーションの色のパレットだ。ぜひカメラの色設計を信じ、活用し、自分自身の好みの色を見つけてほしい。


 そういえばそのいちど、オーディオメーカーの試聴室で絶対音感の責任者の方が作り上げた800万円の最高級サウンドシステムによる石川さゆりさんの「津軽海峡冬景色」のマスター音源を聴かしていただいた。しかもレコードだった。聴く前に担当の方から「聴くと皆様泣きますよ」と言われた。そんな訳はないだろうと思った。だが試聴が終わったとき、僕の頬を涙が伝わっていた。眼を閉じて聴くと石川さゆりさんが目の前で歌っているようだった。着物のかすれる音まで入っている。だいぶ前にフジフォトサロンで、オーストラリアのワイルドフラワーを被写体として、発売したばかりのVelvia100のお披露目写真展を開催したことがあった。その時に女性のお客様の一人が写真を見て涙されていた。当時の担当の方が、それを見て「今回のフィルムは成功だ」とつぶやいたのを今でも覚えている。富士フイルムの色は、絶対色感を持った匠たちが作り上げる。だからこそ、人の心に響く。人を感動させるためには人の感覚と力がとても大切だ。


Photography by Masaaki Aihara



相原正明撮りおろしのkoji note From OITA 相原正明 フォトエッセイ  ぜひお楽しみください





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by masabike | 2024-10-19 11:29 | 日本風景 | Comments(0)
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