荒涼昇月図


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【和の「写心」By Masaaki Aihara】
「荒涼昇月図」オーストラリア ノーザンテリトリー レインボーバレー
FUJIFILM GFX50S + FUJINON GF32-64mmF4 R LM WR
撮影協力 カンタス航空



オーストラリア作品の写真展の時、「こんな雄大な風景の中でのアウトドアライフうらやましい」と言われる。たしかに荒野でのキャンプは絶景であることには間違いはない。だがほとんどの場所は地の果て。グランピングのような豪華な装備ではない。野戦キャンプと思って欲しい。食事もおしゃれなアウトドア料理ではなく、ただ空腹を満たすだけ、ただ栄養を補給するだけの行動食。食事は作業をしながら食べることのできるものになる。そのために食事でいちばん多いのはバナナとドライフルーツ。
デジタルカメラが進化により、高感度化が進み、夜でもISO6400とか10000で普通に撮れるようになった。夕食の後、満天の星や大河のような天の川を眺めながら、バーボンをちびりちびりと飲むキャンプ生活は過去の夢物語。夕食時間は、その日のデーターのバックアップやバッテリーの充電、カメラ機材や車の点検などなど忙しい。座ってご飯を食べる時間はほとんどない。


昔、サラリーマン時代の上司が、なんと元マグロ漁船の乗組員。2年間アフリカの沖のインド洋でマグロを捕っていた。彼の話では、マグロの群れを追いかけている間は、食事はカッパを着てヘルメットをかぶり立ったまま食べる。どんぶりにぶっかけた、マグロとカツオのぶつ切りを食べるというよりも、流し込む食事。食事時間は1人3分。寝る時もカッパを着たままベッドで眠ったそうだ。写真家とマグロ漁船船員さん、職種は違えども自然を相手にするといつでも待ったなし。だから皆さんの考えるような優雅なアウトドアライフをしたいなら、写真家になりたいと思うのはやめたほうが良い。まさに毎日が野戦キャンプ。
それは仕方がない。一番の目的は撮影し作品を残すこと。キャンプを楽しむことでも、アドベンチャーをすることでもなく、作品を撮り残すこと。それが旅の最大の目的であり、写真家の使命でもある。過酷な環境であるほど大自然は美しい。苛酷な環境に我慢できるのを良しとする人だけが写真家として、大地の神様の恵みに出会える。



この作品も灼熱の荒野で地球と我慢比べ。最後に真っ青な空、真っ赤な大地と、そこに華を添えるように月が昇ってきた。無我夢中でシャッターを切り、気が付くとあたりは、夜の神様が支配する世界になっていた。色の変化、光と影のフレーミングの変化に、GFX50SとGF32-64mmはしっかり対応してくれている。7年前GFXシリーズが発売された時に買った組み合わせだが、しっかり良い仕事をしてくれている。カメラとレンズの基礎体力がしっかりしている証拠。やわなカメラだと、オーストラリアの内陸の撮影で何年も使うことは不可能だ。基礎がしっかりしているカメラだからこそ安心して使える。さらにブレない絵造りができる。それは写真家がフレーミングに集中することを大きく手助けしてくれる。


撮影が終わり100km離れたアリススプリングスの町を目指す。今日はキャンプではない。久しぶりに町に行き、モーテルに泊まりベッドで眠れる。それは同時に熱いシャワーと暖かい美味しいご飯が待っている約束だ。真っ暗な荒野、ランドクルーザーを走らせながら、町に着いたら何を食べようか?と思うと自然と笑顔になってくる。もう20年ぐらい前に、アシスタントと苛酷なキャンプを1週間続けた。撮影が終了し町に戻る車の中で、アシスタント君に「町に着いたら何が食べたい。」と尋ねると「バナナ以外であれば何でも。あと冷たいビールが飲みたい」と答えが返ってきた。撮影が忙しくて、ほぼ1日3食 バナナとビスケットと生暖かい水だった。だから座って冷たいビールと温かいご飯であれば何でもよい。そんな撮影生活は今でも変わっていない。そして変わっていないことがもう1つ。富士フイルムの色づくり。フィルム時代から最新のGFX100S IIまで、富士フイルムの色づくりの哲学は変わっていない。だから同じ撮影スタイルで同じ色の世界で僕は地球のポートレートが撮影出来る。変わらないからこそ、一つのスタイルを貫き通せる大切さを、オーストラリアを旅するたびにカメラと40年旅で連れ添った飯盒から教えてもらう。
Photography by Masaaki Aihara


相原正明撮りおろしのkoji note From OITA 相原正明 フォトエッセイ  ぜひお楽しみください






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by masabike | 2024-09-19 10:40 | アウトバック | Comments(0)
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