瀬戸内晩夏 FUJIFILM X Series facebookより




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【和の「写心」By Masaaki Aihara】
瀬戸内晩夏 FUJIFULM GFX100S + FUJINON GF32-64mmF4 R LM WR
香川県 海岸寺附近
どの世界でも最も大変なことは、その世界でのパイオニアとなること。科学でも、医学でも、宇宙開発でも、そして写真でも同じだ。特に特定の被写体の作品に特化し、その写真家の方の作品のすばらしさによって、世に広まる場所がある。僕が知る限りでは北の富良野を世界的に有名にした前田真三さん。そして南の瀬戸内海の幻想的な美しさを世界に広めた緑川洋一さん。
パイオニアたる人々によってつくられた作品を超える事はかなり難しい。下手をすると自己崩壊になりかねない。それぐらい、最初にロケ地を発掘し、独自の世界観を構築された方を超えるのはほぼ不可能だと僕は考える。自分では超えたと思っても、人々の心の奥には常にパイオニアの方の作品が、鑑賞者の中に深く大きく宿る。まるで追随する作品を拒絶するがごとく。
しばしば瀬戸内を旅して撮影をしている。意識して僕は緑川さんの作品を思い出さないように撮影している。なぜならば意識すれば、どこかに緑川ワールドを感じさせる作品になってしまう。だが過去のパイオニアを避けて通れないこともある。オーストラリア・タスマニアの撮影を始めたとき、僕の前に大きなパイオニアの方がそびえていた。その方はPeter Dombrovskis氏。タスマニアの国民的写真家。タスマニアのすべての家庭と職場に彼の作品があると言われているほど地元で愛されていた写真家。僕がタスマニアで撮影を始めたとき、彼はすでに亡くなられていた。撮影を始めるにあたり、彼の作品を数多く拝見した。とても素晴らしく、自分の人生の中で尊敬する写真家の一人となった。だが尊敬し大好きになればなるほど、彼の作品を意識して、あるいは似せようとしてしまう病にかかった。当初、病の出口はわからなかった。森の中で何時も自問自答して撮影していた。答えは足元にあった。日本人ならではの視点や色使い。それは「和」の世界。特にパノラマカメラFUJIFILM TX-1で、縦パノラマ掛け軸風の「間」をとった作品や、シンプルシンメトリーな構成、あるいは湿度感ある色の世界。そして何よりも日本人としての自然との向き合う哲学だった。そのおかげと運もあり、オーストラリアで作品が認められて、現地で個展を3回も開催することができた。パイオニアと異なる世界観、さらにそれが他人のまねできない世界観を見つけられたことが大きかった。
夕暮れの瀬戸内海に向き合う。緑川さんの時代にはなかったラージフォーマットのデジタルカメラ。GFX100シリーズは1億画素を超える画質ながら、機動力と表現力の幅を豊かにしてくれる。フィルム時代では想像もしなかった超高感度性能などを装備している。もしかしたら緑川さんの時代に捉えることができなかった、あるいは捉えようと想像することすら出来なかった光と色が捕捉できる。過去の名作の世界観にとらわれず、自分独自の世界を創り上げるための創造力を助けてくれるカメラだ。
過去のパイオニアの作品と同じ場所・同じ条件で被写体と向き合ったとき、GFXは新たな表現方法の扉を開けてくれる。そのためには、カメラ以外にもう1つ大事なことがある。過去の写真史を学ぶこと。大洋を渡るとき海図が必要なことと同じように、アートという無限の海を渡るときにも、写真史あるいは美術史と呼ばれる海図が必要だ。自分の作品造りの立ち位置と目指すべき方向を明確にする。それにより最新の機材を活用し、過去にとらわれない独自の作品が撮れるはずだ。学ばなければ、自分では素晴らしい作品が撮れたと思っても、第三者から「君のような作品は過去に○○さんが撮っているよ」と言われてしまい、徒労に終わってしまう。だから最新最高の機材を使う場合でも、過去の写真史は大切だ。ハード面だけでは独自感は撮れない。
夏の暗くなっていく島影を眺めながら、フィルム時代の大判カメラをしのぐ画質で35mmカメラと同等な機動力と速写性能でGFXは今日、最後の光を逃さず作品にしていく。緑川さんの時代では不可能だった瞬間が撮れるかもしれない。もし昔、GFXがあったら緑川さんは、どのような作品を成しえただろうか?と思ってしまった。すべての作品を成したい人のためにGFXはあると感じる。そして常に進化し続けるGFXシリーズは、フォトグラファーの心の中の哲学を、妥協することなく映像化できる数少ないマシンに違いない。
Photography by Masaaki Aihara

相原正明撮りおろしのkoji note From OITA 相原正明 フォトエッセイ  ぜひお楽しみください






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by masabike | 2024-08-21 17:13 | 日本風景 | Comments(2)
Commented by hirosalgadou at 2024-08-23 14:38
>僕が知る限りでは北の富良野を世界的に有名にした前田真三さん。
前田真三氏が撮影して 世の中に知らしめたのは 富良野ではなくて「美瑛」。地形が全く違う。
美瑛には前田真三氏(と息子の晃氏)の作品展示館「拓真館」がある。
Commented by masabike at 2024-08-25 10:27
コメントありがとうございます。記事を書くときに美瑛にするか富良野にするか迷いましたが1970年代 後半 前田さんが躍り出てきた当時、富良野ということで、認知されていたのと、海外では大きくエリアでFuranoということでしたので、あえて美瑛ではなく富良野にしました
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