FUJIFILM X Series facebookより転載 「水の城」

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【和の「写心」By Masaaki Aihara】
「水の城」
香川県 豊稔池
FUJIFILM GFX100S + FUJINON GF32-64mmF4 R LM WR
よく観光地のお寺にある、濡れた庭石に新緑の葉や紅葉の葉が落ちているポスター、あるいはホテルや高級マンションの中庭の石がしっとり濡れて重厚感を出している写真。
それらは石が渇いていたら絵として重厚感が出てこない。
では雨の日に撮影しているのか?
というとほとんどの場合は、ホースで水をまいたりしている。


なぜそう言えるか?
ぼく自身リゾートホテルや建築の撮影でそうしているからだ。ただそれでも限界がある。
今回の作品は香川県の豊稔池にあるダム。明治時代に作られたレンガ造りのダム。
いや、ダムというよりも古城のようだ。
初めて訪れたときは、真夏の午後。煉瓦は乾いていた。
撮影しても重厚感は出ない。
翌日夜明けに行き、弱い柔らかい色温度の低い光で撮影した。
でも重厚感は出ない。



1年越しに天気の悪い小雨の降る朝に撮影に訪れた。
ダム全体のレンガが濡れて、夜明けの柔らかい光とモノクロームを選択したことと相成り重厚感を醸し出してくれた。
天気が悪いからこそ、それを逆手に取り撮影できた作品。
毎年この連載で6月になると書くことがある。「天気が悪い時こそ、天気が悪いからこそ撮れる作品もある」ことだ。
特に風景ではすべての作品が快晴ではつまらない。
スナップでもそうだ。雨だからこそ、水たまりに映る人や、あるいはカラフルな傘を広げて歩く人も撮れるはず。
そして天気の悪い時は光が柔らかいのでモノクロを撮影するにはお勧めだ。
僕の場合は雨の日はACROS+Yを選択する。快晴の日や、逆光あるいは半逆光の時のモノクロはACROS+Rを選択しメリハリをつける。
雨や曇りの時はYを選択し、柔らかい光ならではの中間調表現を重視する。
そして雨の日には、デジタルでの撮影と並行してフィルムのACROS IIでの撮影も行っている。
GFX&XのACROSに比べて、フィルムのACROS IIの方が少し硬い表現となる。
石あるいは木などの硬さを求められる時は、階調の異なる表現を求めて両方撮ることも多い。



ここでフィルムユーザーへの、アドバイスが1つある。
フィルムでの撮影の前にGFX&XのACROSモードで事前に撮影すると、その場でデジタルデーターを確認することにより、大筋で全体の雰囲気がつかめる。
ある意味GFX&Xを事前確認用として使い、フィルムの無駄打ちを減らせる。
特にモノクロは現実の世界ではないので、プロでも100%撮ったトーンを頭の中で想像するのは難しい。
いまだからこそできるデジタルとフィルムの融合の撮り方。


話はそれてしまったが、雨あるいは天気が悪いからこそ撮れる、被写体と光があることを踏まえて撮影に臨んでほしい。
ACROSモード以外にも、個人的に雨の日にはETERNAあるいは、彩度を-2~3にしたASTIAモードで撮ることも多い。
オーストラリアでの撮影のコンセプトは「地球のポートレート」地球をモデルにしたドキュメンタリー。だからいろいろな表情を狙う。
砂漠地帯ではVelviaで強いコントラストと彩度で強烈な色彩と乾いた空気感を狙い、ケアンズやタスマニアの森林地帯ではASTIAやACROSで湿度感あるいはしずる感を狙う。


GFX&Xシリーズには数多くのフィルムシミュレーションが搭載されている。どれ一つして余計なものはない。
晴れている時と雨や曇天の時、どれを使い、どのような自分の世界観を構築するかシミュレーションしておくとよい。
そうすれば天気が悪いから写真が撮れないと、カメラ機材が梅雨のカビに家でうずもれることはない。



最後になるがフィルム時代にパノラマカメラTX-1で雨季の劣悪な天気を狙いにオーストラリア北部のダーウィンに行ったことがある。
狙いの中心は「稲妻」。ここは雨季になると世界有数の稲妻発生地帯。
だがいつ撮れるかわからないので、毎日ホテルと稲妻が出そうなエリアと行ったり来たり。
ある夜撮影が終わりホテルに帰ると、受付にいた支配人が「相原さん、毎日撮影に頑張るのも良いけどたまにはホテルのカジノでギャンブルでもして気分転換はいかがです?」と言われた。それに対して僕は「写真家は、毎日の撮影がギャンブルのような人生、これ以上のギャンブルはない」というと笑って部屋のカギを渡してくれた。
梅雨の季節、普段は撮れない作品を狙うギャンブルをしませんか?


Photography by Masaaki Aihara







相原正明撮りおろしのkoji note From OITA 相原正明 フォトエッセイ  ぜひお楽しみください





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by masabike | 2024-06-05 18:16 | 建築土木 | Comments(0)
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