深山秋雨図 FUJIFILM X Seriesより転載

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【和の「写心」By Masaaki Aihara】
「深山秋雨図」高知県・引地橋付近
FUJIFILM X-S20 + FUJINON XF16-80mmF4 R OIS WR、ACROS+Ye、WB/電球
バイクで旅をして、どんな点が車や電車あるいは徒歩と異なるか?僕の答えは空気のにおいに敏感になることだ。昔、オーストラリアをバイクで旅したとき、最も印象に残っているのは乾いた草のにおい。そして最近、四国をバイクで旅して印象に残ったのは緑と水のにおい。この日も松山からトンネルを抜けて四国山地を目指す。トンネルの中ですれ違う空気が、水の香りがした。トンネルの向こうに雨が待ち構えている。そしてその読みは当たっていた。カッパを着ながら「なんてこった、朝から雨か」と毒づいた。でもその空気感に敏感になることは、旅の面白さであり時には辛さにもなる。でもそのどちらも旅の思い出。あの時の雨の感じ、しっとりカッパの中まで入ってきて参ったな、そんな思い出も含めて写真に撮りたい。雨の日には雨の日にしか撮れない写真を撮ろう。
僕は雨の日のフィルムシミュレーション(略してFS)はASTIA/ソフトかACROSさもなくば、ETERNAを使う。雨の町スナップであればASTIAでColorマイナス気味。しっとりした落ち着きが出る。森の中で緑が綺麗ならば、Color+1~2で撮っている。落ち着いた中にも、少し緑の主張が出てくる。この日は仁淀川沿いに渓谷を進んだ。途中寒くなりドライブインでおでんを食べて暖を取る。おでんと温かいお茶でおなかも心も温まる。ふと外を眺めると、山水画に出てくるような光景だった。そこでFSをACROS+Yeに。基本的にはノーマルよりも+Yもしくは+Rがおすすめだ。ノーマルだとメリハリが弱すぎて、霧の中にある森が浮かび上がらない。そしてシャドー部をしめるためにもWBは電球に。前にもここで書いたが、必ずモノクロームでもWBは調整すること。カラーのときだけWBが影響するわけではない。秋雨の昼下がり、山の稜線で霧が舞い踊る。山水画風の景色を狙うには最高の条件。雨だからこそ撮れた。実はモノクロの写真を上達するには日本画、できれば水墨画を見るのが一番勉強になる。長谷川等伯や与謝蕪村などがその代表作。アウトプットの表現が、墨で和紙に描くか、光の信号で印画紙にプリントするかの違いはあるが、基本は風景をどのような条件で、どのように切り取るかは同じである。視点と世界観の引き出しを広くたくさん設けることが写真の上達の重要な極意である。
XF16-80mmF4 R OIS WRは遠景の景色を切り取る場合でもかなり便利だ。ほぼ日常で見る遠景というはXF80mmF2.8 R LM OIS WR Macroであれば切り取れる。そして今回は雨で少し震える指でシャッターを切ったが、カメラの手振れ補正はとても良いお仕事をしてくれた。淡いコントラストの世界でも、XF16-80mmはしっかりとした画像をセンサーに写し込んでくれた。何よりもX-S20のACROS+Yeでの撮影での再現力は、上位機にも見劣りしない。撮影が主体でない旅でも、偶然出会ったシーンがしっかりお仕事レベルで撮れる。それがX-S20の底力。14年前にXシリーズ開発の時に、富士フイルム開発陣に僕が求めたことだった。遊びに行ったとき、突然出会った光景。それが仕事レベルで撮れるコンパクトなカメラが欲しい。それもB0ポスターまで引き伸ばしができるポテンシャルが欲しいと言い、当時の技術陣を困らせた。でもまさにその進化と真価がX-S20に現れている。
家に帰り旅のアルバムを作る。INDEXを見るとACROSで撮った秋雨の風景の前後は、温かいおでんとラーメンの写真。冷えた指で押した風景の感動と、フウフウ言いながら食べたおでんとラーメンの感覚がよみがえる。すべての思い出を、記憶のままに撮れたX-S20のおかげで旅が永遠の思い出として残った。
ちいさな旅も世界を駆け巡る大冒険もX-S20はきっと自分といつも一緒に旅して、小さな思い出も決して忘れないものにしてくれるはずだ。旅に必要なのは地図とパスポートとX-S20だ。

相原正明撮りおろしのkoji note From OITA 相原正明 フォトエッセイ  ぜひお楽しみください





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by masabike | 2023-10-23 08:36 | 日本風景 | Comments(0)
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