紅白春光図



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【和の「写心」By Masaaki Aihara】
「紅白春光図」奈良県 大宇陀 又兵衛桜
FUJIFILM X-T5 + XF150-600mmF5.6-8 R LM OIS WR


ほぼ毎年、春になると撮りに行く桜の老木がある。奈良県の又兵衛桜だ。風景写真が好きな方ならば、その名前や写真はご存じだと思う。とても有名な1本桜の撮影地でもある。



僕はこの古老の桜の木の枝ぶりが好きなので、蕾から2~3分咲きのころ、あるいは満開が過ぎて、散り始めの花吹雪が見られるころに撮影にお邪魔する。あえて満開を外す。その理由は、満開だと「枝ぶり」がたわわに咲く花でよく見えなくなってしまうからだ。この日も花吹雪を狙っていたら、古老の桜の影で「私もいるよ、撮ってください」と言わんばかりに桃の花が目線をくれた。普段は枝ぶりを見せたいので、あまり桜の木に寄らずに撮影する。使用する機材もGFX100SにFUJINON GF45-100mmF4 R LM OIS WR、もしくはGF100-200mmF5.6 R LM OIS WRの組み合わせが多い。でもこの日は、桃の花を引き立たせるために機材を変更した。X-T5にXF150-600mmF5.6-8 R LM OIS WRを選択。これで古老の背後から恥ずかしそうに顔をのぞかせる、シャイな桃の精を撮ることができた。



今回のような有名撮影地では、周囲に100人近い写真愛好家が撮影をしていることも珍しくない。撮影教室やサークルでお見えの方も多い。よくそのような時に、先生から「あなたの個性を表現するように撮りなさい」とご指導されているのをお見かけする。それはとても大切なことだが、一番難しいことでもある。特にこのような有名な撮影地では、他の方との違いを出すのはより一層難しくなる。あえて差別化する1つの方法は、雨や曇りなど、他の方が撮らないような天候で撮ること。でもそれも天気次第。アマチュアの方で会社や学校がお休みの合間での撮影となると、そう簡単に天気は味方しないし、そのような雨や曇りでの撮影の場合、光の読みが難しくなる。だがもう1つ、簡単な方法がある。他の人が持っていない視点、つまり焦点距離で撮る事。今回はそのような場合を考えてXF150-600mmを装備した。コンパクトなボディーは風景等、アウトドアでの撮影には心強い。超望遠ズームは「鳥」や「動物」撮影のためでしょ?と思っている方は多い。だがそれは間違い。超望遠での風景は、非日常の景色を見せてくれる。超圧縮効果と、場合によって風景をパターン化したデザインとして見せてくれる。時には肉眼では気がつかない世界を見せてくれる。



僕はフィルム時代から、オーストラリアの砂漠のロケでは300~500mmの超望遠で、砂丘の風紋を幾何学模様のパターンとして捉え作品としてきた。だが、その当時の500mmはバズーカ砲。でかいし重い。撮りまわしにくい代物だった。そしてそれを支えるには重量級の10kg近い三脚が必要だった。それと比べてXF150-600mmは重量1605g。全長314mmはザック式のカメラバッグにも収納できるので、飛行機での移動の際も通常であれば機内持ち込みが可能だ。(*航空会社により持ち込み規定が異なるので、念のために各航空会社でご確認ください)これは海外ロケなどではとても大きなアドバンテージ。フルサイズの500mmはケースに入れると機内持ち込みがNGだったので、不安に駆られながらレンズを預けた記憶が多々ある。ロストバゲージが多い海外撮影では、高価なレンズを預けるのはとても怖い。XF150-600mmならそんな不安からも解放される。もちろん画質はテレビ局の超望遠ズームで鍛えられたFUJINON。カミソリのような切れ味だ。もう1つ付け加えるならば、レンズの三脚台座がとてもしっかりしている。超望遠になると三脚が必要な場面が多い。そんな時、狭い視点の画角をどんぴしゃりで固定するのに、三脚台座の設計はレンズ本体と同じくらい大切だ。




このレンズ、非日常のOver 900mm相当の視点まで撮影ができる。他人との差別化、自分だけの世界観、これがXF150-600mmを使えば手に入る。いくらユニークな感性やテクニックがあっても、レンズが無ければ撮れない世界。XF150-600mmの独特な世界は、写真展やフォトブックの組み写真の中で、広角系レンズと組み合わせることで、お寿司のワサビみたいにピリリと効いてくれる。もちろんフォトコンなどでも、独特な世界観は審査員の眼にもとまり易くなるだろう。僕は独自の世界を表現するために、撮影装備にXF150-600mmを迷わずチョイスする。あの時持っていればよかったと、後悔しないためにも。撮影は、時に機材に頼ることも大事だという事をこのレンズは教えてくれた。

相原正明撮りおろしのkoji note From OITA 相原正明 フォトエッセイ  ぜひお楽しみください






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by masabike | 2023-04-20 07:59 | 日本風景 | Comments(0)
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