へっつい幽霊 柳家 権太楼師匠 FUJIFILM X Series facebookより

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【和の「写心」《番外編》 By Masaaki Aihara】
 
柳家権太楼師匠「へっつい幽霊」
FUJIFILM X-T4 + FUJINON XF100-400mmF4.5-5.6 R LM OIS WR
 
写真はすべてご縁のなす業と僕は思っている。どんなに良い機材、良い感性を持っていても、自分のイメージに合う光や場所や人物に巡り合えなければどうしようもない。ご縁が無ければ、被写体は存在せず作品は生まれない。そして今回の落語家・柳家権太楼師匠もそうだ。ご縁のなせる業で撮らせていただいた。いまから3年前の春。家で落語番組を見た。演者さんは柳家権太楼師匠。演目は「文七元結」江戸落語の代表的な人情噺。見終わって、近所の公園にお弁当とお酒を持って、家内と落語「長屋の花見」のように繰り出した。桜を愛でながら、ふと横を見たとき驚いた。先ほどテレビで拝見した柳家権太楼師匠が、女将さんと花見をされていた。目が合う。びっくりした。言葉が出ない。やっと言えた一言が「先ほどテレビで拝見しました」。師匠はにっこりして、「ありがとう」とおっしゃられ、ご自身の花見の時間に戻られた。半年後いつも落語の撮影をさせていただいている大阪・池田市のお客様から「相原さん、権太楼師匠のお写真を撮りませんか?ちょうどうちのイベントにご出演されて、お話をしていたら師匠と相原さんのお家が近いみたいですから、ご縁ですよ」とご紹介の橋渡しをしていただくことになった。
 
実は落語を撮らせていただくようになったのもご縁が始まり。2014年の新春大阪での写真展、たまたま会場の隣で新春初笑いのイベントをされていた桂花團治師匠(当時 桂蝶六師匠)がふらりと写真展にお見えになられた。もともと落語は大好きで、オーストラリアのロケの合間も落語を聞いていた。だから落語家さんが写真展にお越しいただいたのは大感激。実は前々から落語家さんを撮ってみたいと思っていた。だが落語の世界の扉をどのように叩けばよいのか知らなかった。花團治師匠と話が盛り上がっていく中で「清水の舞台から」10回ぐらい飛び降りる勇気をふりしぼり、「師匠、すみません。師匠の高座を撮らせていただきたいのですが?落語の撮影の経験はないのですが、いかがでしょうか」とお願いしたところ、快諾をいただき大喜び。しかも2015年、三代目桂花團治襲名を控えていたため、襲名公演すべてを撮影しませんか?という、涙が出るほどうれしいお言葉をいただいた。これもご縁だと思った。でもその喜びは3秒ぐらいで終わった。「相原さん、落語の撮影はシャッター音が邪魔になるので、音がしないカメラを持ってきてください」と言われたのだ。音がしないカメラ?2014年当時、世の中にそんなものは存在しなかった。シーンとした落語の噺の間。そこでシャッター音がしたら全てはおしまいだ。僕は「了解いたしました」と返事して、東京に帰った。寝ても覚めても、「無音のカメラ」で頭の中がいっぱい。富士フイルムさんのエンジニアの方にご相談すると、ちょうど新しい電子シャッターが完成する予定。それであれば、無音モードで撮影ができるという事が判明。撮影をさせていただけることになった。またこれも時の運というか、ご縁だと思った。
 
2014年夏から2015年まで、3代目桂花團治襲名のすべてを撮らせていただいた。それが、襲名のすべてを撮った初めての写真となった。それまでは音が邪魔になるので襲名の撮影はご法度だった。この時はカメラだけではなく、桂花團治師匠はじめ多くの関係者の皆様の御尽力もあり、撮らせていただける機会を得た。そしてその花團治師匠に、結んでいただいたご縁のおかげで、柳家権太楼師匠の撮影にも繋がった。電子シャッターの完成もそうだ。人と時とモノとの出会いのご縁。それがなければ作品は生み出せない。
僕が落語をメインで撮っているカメラはX-H1。サブにはX-T4。X-H1のフェザータッチシャッターは落語の撮影ではとても大切。決定的瞬間にタイムラグなくシャッターが切れるX-H1のシャッター無くしては難しい。だが長丁場の落語会は3時間以上。撮る枚数も天文学的。もう僕のX-H1はだいぶ疲れてきた。オーバーホールしようかどうしようか迷っているとき、X-H2Sが発表発売された。秋から年末へは落語会が目白押し。さら機材の使用頻度が上がる。落語ではないがX-H2Sの発売はX-H1に「そろそろお後がよろしいようで」と言っているみたいだった。新しいX-H2Sは落語家さんの隠れた貌(かたち)を捕らえてくれるはずだ。柳家権太楼師匠に撮影した写真をお見せした。「へっつい幽霊」の佳境、幽霊と長屋の熊さんが、サイコロ博打をするくだり。その場面のお写真を見て師匠に「オ‼ちゃんと噺家さんの顔になっているところ撮ってくれた。ありがとう」と言われた。涙が出るくらい、写真家冥利に尽きる。これもカメラが結んでくれたご縁だと感謝した。
 
文中 敬称略
 
 
Photography by Masaaki Aihara
https://fujifilm-x.com/global/photographers/masaaki-aihara/
https://aiharap.exblog.jp/

相原正明撮りおろしの三和酒類様From OITA 「koji note」 風林光水  フォトエッセイぜひお楽しみください







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by masabike | 2022-09-22 06:48 | 落語 | Comments(0)
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