点景の大切さ

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【和の「写心」By Masaaki Aihara】
「脇役が要」長野県 車山付近より蓼科山を望む
FUJIFILM GFX 50S + FUJINON GF100-200mmF5.6 R LM OIS WR 
フィルムシミュレーション ACROS+Rフィルター
先日、子どもの頃にテレビで見た映画のタイトルがやっと判ってすっきりした。おかげで約60年ぶりに映画と再会でき、心のもやもやが消え去った。幼稚園児の時に家で留守番をしている時、たまたまテレビで見た映画。太平洋戦争の終戦後に戦地から東京に引き揚げた3名の兵隊さんが「5年後また東京駅で会おう」と約束して別れる。その後一人はギャング、一人は道路工事の労働者、もう一人はボクサーになった。5年後、東京駅に来たのは道路工事の労働者だけだったが、数奇な運命の巡りあわせで、最後の一瞬だけ3人が同じ場所に居合わせるという映画。子どもの頃に見て、いくつかのシーンが鮮烈だったのを覚えている。1955年の日活映画で「三つの顔」。監督は井上梅次で主演は三國連太郎、水島道太郎、伊藤雄之助、新珠三千代。詳しことはネットで調べてほしい。
子どもの頃の記憶で映画の断片しか覚えておらず、もう一度見たいがタイトルがわからない。いつも心に刺さった棘のようだった。こんな映画をご存知の方いませんかと、自身のSNSで呼びかけたところ、一人の方からご連絡をいただき、映画のタイトルが判明した。改めて見て驚いたのが、子どもの頃の記憶が間違っていなかったこともあるが、絵造りがとても美しいことだった。フレーミング、ライティング、そして主役と脇役、あるいは点景との対比。昔の映画監督たちが映画を作るときに「良い写真を撮りたい」と言っていたのが良くわかる。写真が1時間半~2時間連続したものが映画。まさに活動写真だった。時に主役を引きたたせるための脇役や点景の使い方が絶妙だった。
これは写真も同じだ。例えば大きな風景を強調したい時、ただ広角レンズを使い広く見せれば広大に写るものではない。大きさを引き立たせる脇役が必要だ。今回の作品では画面下に存在するホテルだ。ちょうど陽が西に傾き、西日がホテルに反射していた。画面を整理するために、VelviaからACROS+Rフィルターに変更した。画面の夕景の色よりも、ホテルに反射する西日と、山の存在だけに視点を絞りたかった。色があると情報が過多になり、視点がぼやけると考えた。ACROSもYではなくRフィルターにした理由は、コントラストをあげて中間調を整理し、山の存在と西日に輝くホテルとの対比にしたかったためだ。あとは山に渦巻くガスの形を見てシャッターを切った。ただ、小さな点景、脇役をしっかり描くためには、やはり高解像度の絵作りが必要。小さなものでしっかり鮮明に存在感を証明すること。このような時にこそラージフォーマットのGFXシリーズが本領を発揮する。小さな脇役でもしっかり存在感を表現できる。オリジナルのJPEG画像で確認しても西日を受けて反射するホテルの窓の一つひとつが明確に再現できている。映画も巨大なスクリーンという舞台で見るからこそ、脇役や点景も活きてくる。ラージフォーマットを使ったら、ぜひ大伸ばしでプリントしてほしい。細かい点景がアイキャッチとなる。それはきっと写真コンテスト等で審査される際に活きてくる。秋から冬にかけては2022年を締めくくる写真コンテストが目白押し。富士フイルムでも9月9日まで来年のX tention展の公募がされている。そんな時、ラージフォーマットはあなたの作品にひと味もふた味も違う差を生み出してくれるはずだ。ちなみに今回の作品、下の建物をトリミングしたフレーミングでも撮影してみたが、逆に山の大きさがぼやけてしまい、小さい風景となってしまった。脇役は大切である。(文中敬称略)
Photography by Masaaki Aihara




相原正明撮りおろしの三和酒類様From OITA 「koji note」 風林光水  フォトエッセイぜひお楽しみください







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by masabike | 2022-09-02 15:26 | 日本の風景モノクロ | Comments(0)
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