瀬戸内遠望 FUJIFILM X Series facebookより転載


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【和の「写心」By Masaaki Aihara】
「瀬戸内遠望」愛媛県 石鎚山山系 瓶ヶ森林道より
FUJIFILM GFX 50S + FUJINON GF100-200mmF5.6 R LM OIS WR
1930年代のアメリカにf/64と呼ばれた写真集団があった。彼らは大判カメラを使って鮮明な作品を作ることを至上とした。もちろんトリミングやマニピュレーションもせずに、リアリティーを追求した集団だ。参加していた写真家はアンセル・アダムズやエドワード・ウェストンなど錚々たるメンバーだった。学生時代にその作品に接してから、自分でランドスケープを撮るならばこのようにありたいと願っていた。


駆け出しの時代、4×5のカメラを購入し、風景や建築を撮影した。それまでの35mm判や中判とはまるで異なる次元の絵造りに驚愕した。それまでの35mm判の画質は飛行機で言うならばプロペラ機で、大判はいきなり超音速ジェット機になったような感があった。だが1つ問題があった。機動力、並びに速写性だ。建築はまだしも、刻々と光が変化しかつ予測できないランドスケープでは、大判は不利であった。特に自分なりの世界観を撮りたい場合、イレギュラーな光が現れたときは対応が不可能だった。結局35mm判、あるいは645判で撮ることになってしまった。また、オーストラリアの撮影には大判カメラを持って行ったことがない。理由は2つ、砂と熱だった。オーストラリアでのロケ地は砂漠。パウダー状の砂は4×5フィルムのホルダーに入り込み、露光時の引き蓋が弾けない。蓋を弾くと砂がフィルム乳剤面に付着し傷がついてしまう。また気温50度近い酷暑ではフィルムが熱で歪み、平面性が心配だった。だからいつも、いつも、大判並みの再現力で35mm判と同等の機動性のカメラが出ないか?夢物語のようなことを祈っていた。





だが夢は叶った。GFX 50Sの誕生だった。速写性能は35mm判フィルムカメラと同等。そして解像力は大判の8×10並の、もはや人間の視力を凌ぐのではとも言われる解像力。個人的にはf/64のコンセプトを実現するために生まれたカメラとさえ思っている。






四国の石鎚山から四国カルストにかけての四国中央山岳部は、お気に入りの撮影ポイント。湿度のある風景と、山水画に出るような切り立った渓谷が連なる。特にその中でも、夕方の石鎚山山系の林道から眺める山並みが好きだ。この日も初夏の光で少し霞む山並みの連なりを狙っていた。陽が沈む少し前。稜線の彼方がキラキラ輝く。目を凝らすと、瀬戸内海の小島が夕日で輝き浮き立っていた。肉眼でも少しぼやける。ファインダーで覗くと、望遠200mmのテレ端で、浮かび上がる島が確認できた。この光とコントラストがしっかり再現できるのか?疑問だったが、迷うことなく100枚以上撮影した。撮影終了後、画像を確認する。肉眼では分からなかった島々の形と、夕日に輝く瀬戸内の水面がはっきりと確認できた。そして一番大切なのは、手前のシルエットになっている部分だ。稜線に根を張り存在感を主張する1本の木。この木がきちんと鮮明に表現されていた。この1本の木で、写真は生きてくる。手前の小さなポイント、そして遥か彼方に霞むポイント。この両者の対角線上の対比が明確に表現されなければ、この作品は存在しえない。また、GFXシリーズで撮影の際に常に考えていることは、5メートル程のプリントに引き伸ばした時、表現と画面構成はどうだろうか?ということである。


大きな風景は大きなサイズのカメラで撮り、そして気持ちの良い、笑ってしまう程に大きなサイズでプリントしてみたい。いつの日か映画館のスクリーン並みのプリントサイズで展示をしたい。GFXで撮りながらいつもそう思う。それができるのがGFX力だと確信している。今頃、天国でGFXシリーズの存在を知り、f/64グループの巨匠たちの多くが悔しがっているに違いない。
Photography by Masaaki Aihara









相原正明撮りおろしの三和酒類様From OITA 「koji note」 風林光水  フォトエッセイぜひお楽しみください







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by masabike | 2022-08-03 17:03 | 日本風景 | Comments(0)
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