足元の宇宙


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【和の「写心」By Masaaki Aihara】
「足元の宇宙」愛媛県 石鎚山 瓶ヶ森林道付近
FUJIFILM GFX100S + FUJINON GF45-100mmF4 R LM OIS WR
雨が降ったり、曇りだったら撮影ができない。できたとしてもあまり良い写真は撮れない。そう思う方も多いはず。僕も以前はそう思っていた。撮影は晴れでないと駄目であると信じ込んでいた。特に風景写真は。だがその概念が覆ることが1998年に起きた。タスマニアの撮影をスタートした時だった。タスマニアは、オーストラリア大陸南東に浮かぶ北海道の8割ぐらいの面積の島。そして島は40 Degrees Southと呼ばれる、南極の南緯40度の暴風雨圏にさらされている。そのため雨が多く、かつ大陸からの熱風と南極からの冷風がぶつかるところなので、気象変化が目まぐるしく、1日の中に四季があるとも言われている。それまで撮影していたオーストラリア本土は、乾燥していて、いつも快晴に近い気候だ。それに対してタスマニアは年間250日雨が降る。撮影当初は天気がつかめず、光待ちばかりで思うようにロケが進まなかった。撮れないならば読書をして気分転換、あるいはあくせくしないでのんびりキャンプ生活を楽しもうと考えたが、それでは撮影がまるで進行しないことに気がついた。快晴がほとんどないのだ。このタスマニアウェザーと、いかに向き合うかが最大の難問となり立ちはだかった。



その答えは本屋さんにあった。タスマニアの著名な写真家Peter Dombrovskis氏の写真集に出会ったのだ。まるで眼から鱗、1トンのハンマーで頭を殴られたような気持ちになった。雨と気まぐれな天気を味方につけた作品群はまさにタスマニアだった。雨が多い気候を逆手に取り、近景から中景、あるいは足元の風景を湿度感たっぷりに表現していた。快晴で撮った写真も、燃えるような朝焼けの写真もない。それでも、彼の作品はタスマニアのどんな家庭にも、職場にも、ホテルにも飾ってある。オーストラリアの国民的写真家だった。晴れなければ撮れない、山の峰が見えなければ撮れない。空が赤く夕日で染まらなければ作品は撮れない。そんな固定概念が、タスマニアの風の前に飛び去ってしまった。特に雨の日の足元の風景。マクロまで行かなくとも、レンズの最短撮影距離~2mぐらいの光景をいかにフレーミングし、光を読んで撮影するか、とても勉強になった。ただ足元~近景の風景はすぐには見つからない。心が焦っていると見つからず、また眼が慣れないと見えてこない。同じ場所をじっくりと狙い心を落ち着けると、何もない森の中に草が生い茂る雑木林が、素晴らしい素材の宝庫に見えるようになった。





今回の作品は四国の石鎚山で撮影した。僕は毎年梅雨の時期に、雨の四国を狙いに行く。当初はGFX100SとGF100-200mmF5.6 R LM OIS WRで朝もやの中に脈々とつながる四国山地を狙っていた。だが夜が明ける頃、天気は霧雨、そして小雨に変化して、視界は不良となった。その時点で第二案として狙っていた森の中へ入る。足元の風景へ。レンズもGF100-200mmからGF45-100mmに変え、フィルムシミュレーションもVelviaからASTIAに変更した。天気が変われば視点も変わる。ならばレンズもフィルムシミュレーションも、場合によってはWBも変えていくべきだ。実は今回の作品は6月29日に掲載したモノクロの作品とほぼ同じ場所で撮影した。森の中へ入り、立ち枯れの木を見つけた時、撮影位置を少し下げてローアングルにした。そこでしゃがんだ時に見つけたのがこの白い花。まずは霧雨の具合が丁度良い立ち枯れの木を撮影し、その次にこの花と草を撮影した。フィルムシミュレーションも、ACROS+YeからASTIAへ、ホワイトバランスも電球からマニュアルへ変更。そして雨で濡れて輝く葉の質感を出すために、カラーを+2に設定した。同じ場所でも天気に合わせて視点とコンセプト、撮影設定を変えることで、悪天候も味方にできる。GFXシリーズは数多くのフィルムシミュレーションがあり、細かいWB設定、そして防塵防滴対応の機材で悪天候でも対応ができる。あとは機材に負けない撮り手の自由な発想が必要だ。


もしタスマニアでPeter Dombrovskis氏の作品とGFX&Xシリーズが無ければ、僕の多くの雨や霧の作品は撮影し得なかっただろう。次に天気を味方につけて撮影するのはあなたの番だ。GFX&Xシリーズを忘れずに持っていくこと、も付け加えておこう。
※GFX&GFシリーズは防塵防滴対応ですが、撮影時の状況によっては機材を保護する装備も必要となります。




相原正明撮りおろしの三和酒類様From OITA 「koji note」 風林光水  フォトエッセイぜひお楽しみください








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by masabike | 2022-07-06 23:05 | 日本植物 | Comments(0)
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