FUJIFILM X Series facebookより転載  桂咲之輔さん

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【和の「写心」By Masaaki Aihara】
「落語家 桂咲之輔」お江戸上野広小路亭
FUJIFILM X-T4 + FUJINON XF200mmF2 R LM OIS WR
昨今、カメラは信じられないほど進化している。高速AF、超高感度性能、高画素などなど、数えあげたらきりがない。先日発表されたGFX50S IIも、今までは別次元の話だったようなラージフォーマットが、比較的安価に、しかも手ブレ補正までついた。プロやハイエンドユースのカメラだったGFXシリーズが、本当にコンビニに買い物に行けるF1のようなカメラになった。それはとても素晴らしいこと。僕が使っているGFX100Sも、街中スナップができる1億画素のモンスターマシン。数年前では考えられない。そのような多くのカメラの進化点の中で電子シャッターによる無音撮影による恩恵も大きい。
1997年9月、オーストラリア大陸南部の荒野にいた。被写体はオペラシンガーのキリ・テ・カナワ氏。世界3大ソプラノと言われていた。なぜ彼女が荒野にいるかと言えば、たった一晩だけのオペラコンサート ”Opera In The Outback” にメインシンガーで出演されたからだ。砂漠でオペラとは荘厳なイメージだ。僕には不安が2つあった。オペラを撮影することはおろか、見るのも聞くのも初めて。当時はフィルムなので、ぶっつけ本番。緊張でガチガチだった。もう1つは音。当時の一眼レフの音で果たして撮影で問題が出ないか?であった。荒野で暑いので消音ケースは使えない。撮影は500mmのレンズを装着したカメラで、客席最後尾からタオルをかぶせての撮影で何とか成功。撮影終了後、横で撮っていたオペラ専門のイタリア人写真家と話して「オペラを見るのも撮るのも初めてで緊張したよ」と言ったら「信じられない、生まれて初めて見るサッカーがワールドカップ決勝みたいなものじゃないか!」と驚かれたのを記憶している。それ以来、音に対してアドバンテージがあるカメラを欲するようになった。2014年1月、ふとしたご縁で知り合った桂花團治師匠(当時は桂蝶六のお名前)の襲名をすべて撮影させていただけるご縁を頂戴した。ただし撮影条件が「音がしないカメラで撮ること」。落語は時として静寂なシーンがある。おそばをすすり味わうシーン、数秒の沈黙が訪れる。この沈黙の間が、落語はとても大切。この時にシャッターの音がしたら、沈黙の間は台無しになり、お客様にとても迷惑が掛かる。そんな訳で落語ではそれまで、枕(噺の冒頭の部分)は撮影がOKでも、羽織を脱いで本題に入ったら撮影がNGという場合が多かった。そのため襲名を含めて高座の写真は少なかった。


 この時は運が良かったことに撮影が始まるころにX-T1が電子シャッターで無音撮影できることとなり、1年近い襲名公演をすべて無音のX-T1で撮影することができた。お客様も演者さんにも気が付かれず撮影ができた。この無音性により今まで撮れなかった世界が撮れるようになった。そのあと薪能、狂言などの静寂性が求められる撮影の依頼が舞い込むようになった。まさに映像のブレークスルー。花團治師匠からも「今まで落語家の襲名の記録は音がだめで写真がほとんど残っていない。落語界にとっても貴重なアーカイブとなった」とおっしゃっていただいた。そして今年の6月、桂花團治師匠から頂戴したご縁で、同じ桂一門の四代目・桂春団治師匠門下の、桂壱之輔さん、咲之輔さんの2人会を撮影させていただいた。用意したのはX-T4 & XF200mm。コンパクトな超望遠レンズは2時間近い手持撮影でも安心。そして安心の無音の電子シャッター。お客様も演者さんも、カメラの音に神経を逆なでされることなく、お二人の演じる落語の世界に没頭できた。咲之輔さんが今回の撮影を快諾してくれたのも、ご自身がX-H1のヘビーユーザーであり、Xの画質と無音性を熟知し、X-H1を使って師匠の皆さんや仲間の落語家さんの写真を寄席で撮られているからだ。フィルムカメラからXシリーズ。様々な進化があり、どれも素晴らしいと思うが、個人的には無音性が一番ありがたいと思う。今まで撮れなかった世界が撮れる、新しい扉を開けてくれたからだ。ネイチャーやストリートフォトだけではなく、電子シャッターの無音性と高性能XFレンズ群は、伝統芸能の世界、音楽、静寂が求められるあらゆるシーンで新たな世界を撮れるようにしてくれるだろう。
Photography by Masaaki Aihara


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by masabike | 2021-09-21 08:44 | 落語 | Comments(0)
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