しずくの国 四国 FUJIFILM X Series facebookより転載

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【和の「写心」By Masaaki Aihara】

「しずくの国」愛媛県 石鎚山山系瓶ヶ森林道付近
FUJIFILM GFX 50S + FUJINON GF100-200mmF5.6 R LM OIS WR

毎年6月になると梅雨の四国へ撮影に行く。その理由は山水画の世界が広がっているからだ。急峻な深い谷と、南の海から運ばれてきた濃厚な湿度感の空気が作り出す世界。空気の中にはわずかにオーストラリアの熱帯雨林にも共通する水の香りが含まれている気がする。この連載で何回も述べているが、日本を表現するのに一番日本らしい季節が梅雨。そして日本画のような世界が広がるのが梅雨の四国山地だと思う。強烈なアイコンになる被写体は少ないが、心にじっくりジャブのように効いてくる風景だ。パリ-ダカール・ラリーに出てみたい、とバイクラリーを始めた頃から四国山地の林道をバイクで走り回っていた。その景観の奥深さと神秘性に惹かれたが、当時の自分の視点ではそれを作品とすることが不可能だった。だがオーストラリアという世界で最も乾燥した大陸を旅したことで、外から日本を見た視点を持つことで、この湿度感と奥深い景色を撮る視点を発見できた。そのキーワードは「しずくの国」だった。空気中にある「湿度のしずく感」をいかに表現するかにかかっている。このキーワードは実は日本全体の風景写真にも言える。フィルム時代、この景色の奥深さと湿度感を心のままに表現するのには、大判フィルムが必要だと思っていた。ただ、刻々と変化するガスと光に大判カメラで対応するのはかなり難しかった。そしてそれは僕にとって、着眼点は分かったが表現ができないままの大自然からの長年の宿題となった。
だが2年前、宿題を解くカギが見つかった。GFXシリーズだ。大判カメラと同等、あるいはそれ以上の解像力と機動力。その力はレンズと被写体の間に存在する大気の中の「しずく感」をも再現できることを体感した。さらに、コンパクトで機動性が高い。変化する光と影とガスに追随しながら、大判の画質が得られる。ランドスケープを撮る者にとっては夢のようなカメラだ。
この日の四国山地は前線が通過して、変化の多い天気。1分先が読めない。前夜からの激しい雨。夜明けの石鎚山系は、すべてガスの中だった。だが雲が切れた瞬間、遠くの山から足元の谷間で、まるで江戸時代の絵師・蕪村が描いたような世界が広がる。もうこの瞬間が撮れたことで四国に来た目的は達成できた。撮影後、再びガスに隠れていく四国の山並みと孤木に自然と手を合わせて「ありがとう」とお礼を述べた。四国の山の神が撮らせてくれた一瞬だった。もしGFXが無かったら、この空気感を写真に残すことはできなかっただろう。
江戸時代、等伯や蕪村は筆と墨でこのしずくの国の風景に向き合った。そして現代の絵師ともいえる写真家はGFXでこの風景と向き合う。筆が無ければ描けなかったように、GFXが無ければこの国の湿度感あふれる風景は表現できないと、深山幽閉の世界で感じた。

 
Photography by Masaaki Aihara


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by masabike | 2021-07-22 16:53 | 日本風景 | Comments(0)
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