夏の夜鉄 FUJIFILM X seriesより転載

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【和の「写心」By Masaaki Aihara】
「夏の夜鉄」 千葉県 小湊鉄道 飯給(いたぶ)駅
FUJIFILM X-T4 + ZEISS Touit 2.8/12
ISO6400 Velvia ホワイトバランス:電球
今日は七夕。夏の夜空の作品をお見せしたい。学生時代から夜の鉄道が好きだった。特に月光のもと、月明かりの雪原を走る列車や、あるいは駅の情景が好きだった。僕の学生時代はモノクロフィルムでASA400(当時は感度表示が「ISO」ではなく「ASA」だった)が最高感度。それを当時の富士フイルムの高感度用増感現像液パンドールを使って自分で現像し、ASA1600相当にして撮影していた。その後のカラーの時代になってからは、月明かりの情緒を表現するためにFUJICHROME 64Tというタングステンフィルムを使っていた。タングステンを使っていた理由は、当時の駅の灯りが白熱灯だったので、タングステンフィルムで赤味を抑えるためだ。これが夜空の青を表現するための自分の好みの方法だった。だが課題もあった。感度がASA64だったので、夜の駅だと露光時間が30秒、あるいはそれ以上。そうするとローカル線では列車が動いてブレてしまうこともしばしば。今回の飯給駅のような無人駅で、さらに夜となると、乗降客がいない列車の停車時間は極端に短い場合がある。10秒前後の場合もある。そうすると、フィルムだと露光途中で列車が発車してブレてしまう。それと、やはり感度が低い分、なかなか星などが写りづらいのが最大の悩みだった。また、フィルムは当然その場では見られないので、長秒露光してみたら肉眼では見えない邪魔なものが写り込んでいたり、さらに悲しいのはAFがないため、ピンボケだったりする。
そんな昔の経験があるので、夜の鉄路の撮影はX-T4になってから天国のようだ。特にXシリーズは今年発売されたXF18mmF1.4をはじめ、多くの明るい単焦点広角レンズがそろっている。夜鉄には最高のラインアップ。今回は大きく夜空を取り込みたかったので、Carl Zeiss Touit 12mmF2.8を使い、夜空のもと闇に浮かぶ列車を表現した。ISO感度は6400。案の定、列車の停車時間は10秒足らずだったが、露光時間が0.8秒だったので、列車はブレずに済んだ。特にX-T4に進化してから、夜間の点光源に対するAFの合致スピード、精度が格段に向上した。風景写真を撮る場合も、風景の中に点景で花などを撮る際のAF中抜けトラブルも大幅に解消された。また動体追従性能も、夜間で遠ざかる列車に対してもしっかりAFが追随して逃さない。ローカル線などで列車が1時間に1本、あるいは2時間に1本しか来ない場合も数少ないシャッターチャンスを逃すことがなくなった。
また夜の鉄道では、光源の種類が多様でミックス光源となる。こんな時にもXシリーズの色再現はとても癖がないため、助かる。
夜の田んぼの中で列車を待つ。夜の田んぼはカエルの大合唱。天高く上った月の明かりで遠くの山まで浮かび上がる。列車がホームに滑り込み、赤いテールライトが去っていくまで、X-T4のファインダーの中のAFフォーカスマークは常に合致のグリーンだった。そして列車が去った後、再び夜にこだまするカエルの大合唱。モニターを確認すると、僕の思い通りの月下の鉄道が浮かび上がっていた。きっと田んぼのカエルたちは、闇夜にモニターの明かりで浮かび上がった僕の満面の笑みを見たことだろう。夜鉄という少ないシャッターチャンスでも自分の世界観を具現できるX-T4は、学生時代から思えば夢のカメラだ。X-T4を持って1970年代の冬の北海道の駅に戻りたい。タイムマシンがあればなと考えてしまう。

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by masabike | 2021-07-07 19:48 | 鉄道写真 | Comments(0)
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