Katachi 蔵前橋 FUJIFILM X Series facebookより転送

Katachi 蔵前橋 FUJIFILM X Series facebookより転送_f0050534_21505276.jpg

【和の「写心」By Masaaki Aihara】
「Katachi」 蔵前橋 東京 隅田川
「相原君、この骨盤のヒビと歪みが克明に、どんなヒビでも見逃さずにわかるように撮影してくれないかな?できれば肉眼で見る以上に」「わかりました、ライティングとフォーカスに注意して撮ってみます。でも一応、カメラの解像力の限界もありますからご理解ください」これは2013年3月シベリア、ヤクーツクにあるマンモスアカデミーでの撮影の時の会話だった。会話の元は、シベリアの永久凍土から発掘されたマンモスの骨格だった。この時同じ永久凍土から2万5千年前のマンモスの赤ちゃんが冷凍状態で見つかり、その撮影で厳冬のシベリアに撮影に赴いた。3月になり暖かいと言われても外気はマイナス45℃。肺が凍りつく冷たさだ。撮影は冷凍マンモス以外にもシベリアで見つかったマンモス等の骨格800点を撮影するものだった。当時、発売されたばかりの超高画素デジタルカメラを持ち込んでの撮影。マンモス研究の先生から、骨のヒビ1つ1つ、骨格のゆがみの1つ1つがマンモスから現代の哺乳類への進化の貴重な手掛かりとなる場合があるので、眼で見た以上に克明に正確に撮ってほしいと毎日言われた。そしてこの日、撮った写真を現場で確認しながらマンモスの先生は「小さなヒビとかもっと克明に撮れないの?」と言い、「先生、いまのデジタルカメラではこれが限界です」「そうか・・・・4×5とかの大判カメラじゃないとやはり無理か・・・」とやりとりし、少し未練を残すも撮影は無事に貫徹した。


そう写真にはとても大切な使命と、他のアートにはない特性がある。それは記録性。これは写真の最も大切な特性でもあり、武器でもある。どんなアート作品の写真も時間が経つと記録としての宿命からは逃れられないと、学生時代に写真の授業で習った。シベリアで撮影したマンモスはまさに写真の最大の使命を生かすものだった。
これはGFX100Sでも同じこと。群を抜く色再現と表現力をもつスーパーマシンであることに変わりはない。だが1億画素のスペックは被写体を克明に記録する、記録伝達メディアとしても大きな役割を担っている。GFX100Sが発表された時に最初に脳裏に浮かんだのが、「蔵前橋を撮ってみたい」だった。昨年7月に蔵前橋をXシリーズで撮影したとき、橋げたのリベット1つ1つの存在感、ペンキのはげかけた部分などがもっと克明に撮れたら良いなと感じた。これもGFX100Sを導入した動機の1つだった。僕は普段、不動産や建築系の仕事が多い。今回は蔵前橋を克明に撮りたくて光を待った。コントラストが弱くなり、太陽光が水面の反射で柔らかく回り込む、雨が降りそうな曇天を待った。そしてチャンス到来、撮影に向かった。結果は想像を遥かに凌いだ。リベットのまわりのペンキの塗りむら、鉄材のゆがみ、橋げたのアールの立体感まで克明に撮れた。PCのモニターを見ていると、ポジをルーペで覗いた時のような、3Dのような立体感が感じられた。この記事をご覧の皆様にオリジナルデータがお見せできないのが泣きたいくらい残念。


ある建築関係のキュレーターの方に写真を見せたところ「ゼネコンはこのカメラをとても欲しがる」とのことだった。なぜなら肉眼を超える克明な記録は、橋やトンネルなど、鉄材やコンクリートの疲労度がよく分かるからだ。それをさらにAIで検索すれば建造物の疲労度などの問題点が素早く分かり、職人さんたちをすぐに派遣できるからだそうだ。
実は建築業界もベテランの職人さん不足。ちょうど今、高度経済成長期に建設された橋、トンネル、ダムなどの大型土木施設を中心に老朽化が問題になりつつある。保守点検のためのベテランの職人さんは数が少なく全部の施設を肉眼で、制限のある時間と条件で完全に検査し、網羅するのは不可能に近い。だから超高画素のラージフォーマットのカメラで撮影した画像をAIで検索して、問題個所を発見するのが一番効率的。しかも肉眼以上の一億画素の解像力はベテランの職人さんでも見落としそうな問題も見つけられるかもしれない。



GFX100Sは写真の記録性を改めて強い武器にし、社会全体に貢献できると感じた。これはいろいろなアーカイブを作ることに関しても同じだ。蔵前橋を撮りながら思ったことがある。2013年のシベリアにGFX100Sがあったならば、もっと克明な骨格標本が撮れたはずだ… もし次に新たなマンモスがシベリアで発見されたときは、僕は迷わずGFX100Sを持って極寒の大地に立つだろう。



富士フイルムさんのX シリーズフェイスブックで 和の写心(毎週水曜日更新)を連載中。「イイネ」押してくださいね



ブログランキング応援クリックお願いします。応援たくさんしていただけるとたくさん写真がアップされます 笑
下のランキングバナーをクリックしてください。







by masabike | 2021-05-05 21:52 | Katachi | Comments(0)
<< 家路  Tasmania Talkin... >>