今回はご本人によるヴィンテージプリントの展示
昔 アサヒカメラに連載されていた「村へ」を食い入るように毎月眺めていた。まだ当時 中学生から高校生。写真のコンセプトはよくわからなかったが、妙に惹かれて毎月拝見していた。ただ生意気にもトライを素粒子現像して、田舎のあぜ道や藪をとれば俺でも撮れるのでは?と思っていた。なんでこんな写真が評価されているのかわからなかった。当時の僕はガチの撮り鉄。田舎の駅でSLを撮っていた。でも田舎の駅の周りに広がる農村風景や生活が、この北井さんの「村へ」の中にとてもよく感じられた
そして当時、北海道にロケに行くと、石炭鉱山閉山で社会問題になっていた。僕は鉄道を撮りながらも、地方の人々の暮らしのドキュメンタリーも撮りたかった。暴言かもしれないけど、当時は風景写真にはまるで興味がなかった。富士山や紅葉 あんな動かない止まっている被写体なんて誰でも撮れる、行けば撮れると思っていた。写真は生活や動くものの一瞬を切り取ってこそ写真と信じていた
当時「村へ」連載で記憶に残っているのが「オンドル小屋」「マタギ」の2本が強烈だった。
今回 初めてのビンテージプリント。拝見したとき見ていた時の高校生の自分の視点と気持ちに戻っていた。そして展示された多くの作品が心に記憶として残っていた。45年異常心に残る作品 脱帽だった。そして高校生の時は見ても理解できなかった、空気感 臨場感そして記録性もう涙ものだった
特に「こたつ」というタイトルの山形の農家の女の子がこたつに入っているだけの写真。昔見たときは、本当に誰でも撮れると思っていた。でも今見るときちんと1枚の写真に「カレンダー 時計 その日のテレビの番組」が写し込まれて時を確実に記録していた
そして女の子の自然なほほえみ。北井さんとの間にバリアが無いこと感じた。誰でも撮れそうで、だれにも撮れない写真。北井さんにしか撮れない写真
そしてすべての写真から、日本の村の土の香り 草や藪の香り。農家の台所や玄関の臭いが感じられた。時と光と臭いを閉じ込めた作品だった。当時の写真家を目指していた生意気な小僧にはまだそこまで写真を理解する力はなかった。
僕の好きな日本の写真家さんは 北井一夫さん 濱谷 浩さん 野町和嘉さん 。実はこの3人の方 僕的には共通項がある。ご本人が見たら怒るかもしれないけど。
●土の臭い 埃の臭い 生活の匂い 風の香り がする写真
●1つのテーマーをじっくり追い求める
●写真の撮影者の名前を隠しても、作品が誰のかわかるしっかりした世界観
僕はあまり生き方も写真も器用なほうではない。なので写真家を目指し始めたとき、この3人の写真家のように生き 作品を生み出そうとひそかに心に決めていた。見た目の美しさよりも自分の世界観を押し通そうと。
なので昨日は北井さんの作品を拝見しながら46年前の自分にも再会してきた。そして最後に北井さんの写真エッセイ本を買わせていただいた。実は北井さんに関して持っている本はこの2冊だけ。しかも1冊目は46年前 1974年に買っている。高校1年生の時。Nikon F2を買ったときである。よく自分でも当時このアサヒカメラ増刊「村へ」を買ったもんだと思った。本当に見て読んでわかったのかなと?おませさんだったのだろうか?
ちなみに北井さんが第1回 木村伊兵衛賞受賞である。そして最近ではこの初版の「村へ」が5000円もするそうで驚きだった
久しぶりに時を閉じ込めてくれた写真展を拝見した。うけねらいや、時流を追いかけたものではなく自分の世界を表現した、王道の作品を見せていただいた
企画してくれた富士フイルムスクエアさんにお礼を述べたい。まさにカメラメーカーではなく写真メーカーだからこそできた写真展だと感じた
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