春暁古桜図 奈良

春暁古桜図 奈良_f0050534_20573393.jpg

【和の「写心」By Masaaki Aihara】
「春暁古桜図」奈良県大宇陀 又兵衛桜
FUJIFILM GFX100S + FUJINON GF100-200mmF5.6 R LM OIS WR
僕はかなり天邪鬼な性格なので、満開の桜よりも満開になる1歩手前、あるいは蕾、さらには散り際が好きだ。昔ユーミンの歌にも「つぎの夜から欠ける満月より14番目の月がいちばん好き」という歌があった。それに近い感じだ。



今回も満開の桜を狙うつもりはなかった。その訳は満開だけが桜ではない。樹、本体のたたずまいも含めて、自分はどのように表現するかを考えている。そのため満開は最優先ではなく1つの通過点。最高潮よりも、その少し前が意外と樹のエネルギーが感じられると思う。大切なことは、自分と樹がシンクロできて、自分の好きな表現をするかだ。オーストラリアで撮るときと同じだ。この表現にはカメラのフィルムシミュレーション等設定も大きく関係する。GFX100Sには19通りのフィルムシミュレーションが搭載されている。これと細部まで細かく設定できるWBと露出を組み合わせ、自分のイメージする世界を作り上げていく。撮ったときがほぼ完成形。あとはプリントでの微調整。EVFでスルー画を確認しながら撮影していくと、どんどん自分の世界に入りこんでいく。今回の撮影はフィルムシミュレーションASTIA モードが中心、Color(彩度)とWBを調整しながら、自分の世界を狙った。

 皆さんは桜の撮影はVelviaモードと思っている方も多いはず。だが花が咲き始め、5分咲きを過ぎたら、Velviaではマゼンタ色がのりすぎ、ピンク色が強くなりすぎて桜の妖しさが損なわれてしまう。実際の桜の花びらは思っているほどピンクではない。樹にはそれぞれの形態に合わせた表現方法がある。花が蕾であればVelviaモードを選んでいた。その訳はこれから咲き誇る花の力を蓄えている真っ赤な蕾のエネルギー感を出すのにはVelviaが最適だからだ。そして満開ならばマゼンタの色のりの少ないPROVIAもしくはASTIA を選ぶだろう。そして散り際の桜吹雪であればVelviaかACROSで、空を舞う花吹雪を強調したかもしれない。そして以前冬場、花のない幹だけの又兵衛さんを撮ったときは、ACROS + Rで樹の存在感を強調した。満開を狙うだけが桜の撮影ではない。自分の世界に波長が合えば満開ではなくてもよい。GFX100Sは19通りのフィルムシミュレーションを生かす1億画素の高画質。それは光だけではなく肉眼では見えず、直感でしか感じえない妖しさすら逃さない。
おかげで夜明けの空気感と樹齢300年とも言われる又兵衛桜は独特の存在感を捕らえることができた。桜の撮影の固定概念から逃れ、多くのGFX100Sの設定機能を使いこなせばjpeg撮って出しで完璧に自分だけの世界を表現できる。1億画素は細かく撮るだけではなく、被写体の周囲の空気感、被写体とレンズの間にある空気感も再現してくれる。あとは被写体を狙うあなたの心の眼だけだ。


そして何よりも、世阿弥が「時分の花をまことの花と知る心が真実の花になお遠ざかる心なり」と教えてくれている。一つの見方にとらわれず、被写体とじっくり対話をして、いろいろな季節と光で風景写真は狙うとよいと思う。GFX100Sの豊富な色のパレット(フィルムシミュレーション等)はあなたの大きな力となってくれると確信する。


Photography by Masaaki Aihara
できれば下の「人気ブログランキング」をポチしてください
ランクキングのポイントが上がります
別に課金されたり、何か請求が来たり エキサイトから広告が来たりするわけではありません。単に僕のサイトに何人来たかのポイントがランキングに加算されるだけです
ご安心を。ポチしても僕がお家や職場にお伺いすることもありません

おだてられるとたくさん撮ります 笑

富士フイルムさんのX シリーズフェイスブックで 和の写心(毎週水曜日更新)を連載中。「イイネ」押してくださいね




by masabike | 2021-03-31 20:58 | 日本風景 | Comments(0)
<< 猫カフェ始めます カメラに求めるもの >>