晩秋枯木図  FUJIFILM X Series Facebookより転載



晩秋枯木図  FUJIFILM X Series Facebookより転載_f0050534_08022439.jpg


【和の「写心」By Masaaki Aihara】

「晩秋枯木図」 福島県 裏磐梯
FUJIFILM GFX100 + FUJINON GF100-200mmF5.6 R LM OIS WR + テレコンバーターGF1.4X TC WR

オーストラリアの荒野で一緒に撮影した初老のアメリカ人紳士から「Masa、明日の朝、撮影が終わったらお互いの写真を見せ合わないかい?」と別れ際に声をかけられた。ただ一緒に撮影した名も知らない初老の紳士は僕にこう告げて、自分のキャンプに帰っていった。翌日、朝の撮影が終わり、荒野に不釣り合いのリゾートホテルのカフェで待ち合わせた。まだノートPCも見かけない時代、多くの写真家は小さなブックを旅の間、持ち歩く人が多かった。だがこの紳士は大きな四つ切サイズのブックと大型写真集を持ってきた。見せられたプリントはヨルダン・ペトラ遺跡。とてもなめらかで奥深いコクのある諧調のモノクロ作品。予想もしないものを見せられ言葉がなかった。8×10のフィルムで撮影された、まるで神殿がそこにあるような存在感だった。人生で最も感動したプリントの1つだった。彼も僕の作品をとても丁寧に見てくれて、ここで書くのはとても恥ずかしいくらい、お褒めのコメントもいただいた。「君の作品は色のマジシャンだね。あと作品の雰囲気とコンポジションが、友人の写真家アンセルに似ているね」ととてもうれしくなるリップサービスを頂いた。僕の作品を見終わって、お茶も終わりそろそろ帰ろうとしたときに、僕は彼が初めてのオーストラリアだったので、記念に彼が特に気に入ってくれた作品の僕のポストカードセットにサインをしてプレゼントをした。彼は僕にもしアメリカに来ることがあれば連絡をくれと、名刺をくれた。彼の名前はEMMET GOWIN。当時不勉強な僕は彼の名前を知らなかった。だが温かい人柄の奥に隠れた凄みを感じた。「ちょっとトイレに行ってくる」と言いテキサスにいる友人のアメリカ人写真家に国際電話をして、今の状況を伝えた。
アメリカの有名雑誌のTOPを飾る友人の写真家からは「マジで!いまMr. GOWINとお茶しているの?彼はアンセル・アダムスとともに現代のアメリカを代表する写真家で神とさえ言われているのよ。その人にポストカードプレゼントした?ほんと!それビートルズにレコードをプレゼントするようなものよ」と言われた。トイレから戻り、知らなかった無礼を詫びると「今は現役をほぼ引退しているから」と言われた。そして近々日本での個展を見に来るように言われ僕たちは別れた。東京で行われた個展もすべてモノクロ。8×10での世界の奥深さをいやというほど見せつけられた。あの世界観、あのトーンを撮りたい。そう思いながら時代はデジタルへ。8×10で風景を撮る世界は、失望のかなたに消えかかっていた。そんなときに1億画素のGFX100の登場。一番期待したのは8×10のモノクロの世界。モノクロームこそ画素が大きくなればなるほど、その恩恵を一番受ける。黒から白までの諧調のドットが増えるからだ。早朝の裏磐梯、薄曇りの空から柔らかい日が射す、まさにモノクロのための光だ。撮り終わったとき、EMMETさんに見せていただいたペトラの作品が頭を横切る。30年たってやっと彼に僕のモノクロームと言える作品が撮れ始めた気がした。だがGFX100のモノクロ力はSNSでは100%伝えられない。ぜひ富士フイルムフォトサロンや富士フイルムイメージングプラザで、GFX100で撮られた作品を生で見てほしい。初めて真理を見せつけられた衝撃を受けるはずだ。そしてそのあとのことには、僕は責任が持てない。ただ1つ言えることは、無性にGFX100を担いでモノクロームの世界を追い求めたくなるということだ。




富士フイルムさんのX シリーズフェイスブックで 和の写心(毎週水曜日更新)を連載中。「イイネ」押してくださいね



ブログランキング応援クリックお願いします。応援たくさんしていただけるとたくさん写真がアップされます 笑
下のランキングバナーをクリックしてください。




 
by masabike | 2019-12-18 08:02 | 日本風景 | Comments(0)
<< 湖北明星図 FUJIFILM ... 写真は何で撮る? >>