
FUJIFILM X30
この1ヶ月読んでいる本がある。「会社に入ったら三年間は「はい」と答えなさい」である。花團治師匠のご縁でご紹介いただいた、園部貴弘氏の著書だ
。内容は難しくなく、とてもシンプルな、ビジネス書と言うか人生指南書だと言えばよいのだろうか。
でもよくありがちな成功するためへの、サクセスストーリーではなく。サラリーマンとして、あるいは仕事をする人間としての、在り方を書かれている。そして1センテンス読むたびにうなずいてしまうので、1ヶ月かかっても読み終わらない
園部さんは、サラーマンであるが、ご実家が京都で最も古いと言われている、料亭 「平八茶屋」の次男さん。
物心つかれた時から、厳しい料理人の世界を見てこられた。その体験とサラリーマンとしての視点を織り交ぜて書かれた本
料理人さんの世界も落語家さんの世界も、師匠から叱られても、「はい」以外は言えない。昔はカメラマンの世界もそうであり、メディア全体の現場がほぼそうだった。それがすべて良いとはメディアの場合は言えないが、「はい」という期間は修業期間。そこでたくさん辛いことはある。自分自身でも代理店の若造時代、見習いカメラマン時代。ほぼ口答えは出来なかった。出来ない理由の大きなことの一つは、自分の無知さ、経験不足。だからそれを指摘して怒られても、反論どころかグウ根も出ない。
つまらない写真を撮れば、「まさかこれ本番じゃないよね?」「どうしてテストでこんなに撮るの?」「銀の無駄ずかい(見習いのころはすべて銀塩フィルムだから)」
「どうしたらこんなに下手な写真が、たくさん撮れるのかな?」などなどたくさん言われました。でも言われた作品の多くは、どこかあとで冷静に考えると、直すべき点があったり、撮影の集中力が切れていたりしている。今みたいに「イイネ」が多いから、プロになってしまおうかな?なんてお子様みたいな考えが通用しない時代。
SNSの発達で、誰もが世界中に、自分の写真を見せることが出来る。そして新たなる才能の発掘や発見も昔よりはるかに多い。それはとても素晴らしいことで、賛成だと思う。ただ、プロになってはいけない人までも勘違いでプロを目指してしまう。
SNSだと「イイネ」やたくさんのほめ言葉をいただける。たまに、クレームも (笑)でも、ここで「イイネ」が多いから、即プロになるというのは、車での車庫入れが上手だからF1パイロットになりたいぐらいの勘違い。所詮、SNS等では、どんなに評判が良くても、SNSで写真を見るのは無料。プロになったら、お金をいただいて作品を買ってもらう、あるいは見せる。そこに金銭の授受という経済行為が出るのと、メディアや制作業界で働くことになる。そして業界にはいろいろな掟がある。写真家には写真界の、料理人さんには飲食業界、落語家さんには落語の世界の掟がある。それを学ぶためには3年は最低でもかかる。一人前になるためには掟、技術、立ち振る舞いを合わせて10年はかかる。そう考えると、最低でも3年間は「はい」と言い続けるのは当然だと思う
もし今、SNS等で、もしかしたら自分は、才能がある。いきなり写真家あるいはクリエーターデビューしようかな?と思っている方、ぜひこの本を読んで、3年間は、じっと耐えることも学んでいただきたい。耐えている間に基礎を学び続けることが、プロの世界で生き残る最低限の掟だと思う。基礎が無くしては未来はないと思ってほしい