FUJIFILM X Series FB 8月2日より

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FBご覧いただけない方のために

【和の「写心」 By Masaaki Aihara】

「夕立光遊図」東京都 文京区
FUJIFILM X-T2+FUJINON XF90mmF2 R LM WR
アスペクト比16:9 ISO3200

時間があると美術展や美術館によく行く。特に見に行くのは日本画。海外で仕事をする機会と時間が長くなればなるほど日本画にひかれる。その構図と色使いは、日本で撮影する時に大いに参考になる。特に風景撮影では。日本画で好きなのは、以前も書いたが長谷川等伯、そのなかでも松林図屏風。涙が出るほど、抱きしめたくなるほど好きだ(国宝なので抱きしめたら、たぶん警察のお世話になると思うけど 笑)。そして次に好きなのは福田平八郎、やはりそのなかでも「雨」と「漣」。質感、空気感、そして湿度感が好きだ。またどちらも日常の平凡なシーンを描いている。誰しも見逃しているような、あまりにも普通すぎる日常。そこを作品にするのが一番難しく、最終の到達点かもしれないと教えてくれる。

ある雨の午後、日常の光を捕まえたくて、散歩に行った。お気に入りの植物園に入ると、「あいにくの雨で今日は園内誰もいないですよ。でもごゆっくりお楽しみください」と植物学者のような凛とした係の女性に言われた。心の中で「やったー、貸切だ!!」と叫んでしまった。天気は雨が降ったり陽が射したりの繰り返し。2時間ぐらい撮ると、急に夕立が来た。その時、頭の中を平八郎の「雨」のイメージが横切る。どうしたらこの夕立を自分なりに表現できるか?僕がしたことは2つ。アスペクト比を16:9に、そしてISO感度を3200にすることだった。何よりもこの作品で大切なことはアスペクト比16:9 これにより花を画面の隅に配置し、降りしきる雨の存在を、雨の降る空間の広がりを表現できたこと。そして1粒でも多くの雨粒を表すために、ISO感度を3200までUPして高速シャッターを切った。暗い夕立の中で1/2000のシャッターだ。日中でありながら、ISO3200。風景写真撮影の常識ではありえない設定。アスペクト比の変更と併せて、こう撮らなければならないという縛りを捨て去ることが、目の前の風景に込めた気持ちが表わせると思う。特にアスペクト比の変更は作者の世界観に大きく影響する。ミラー式カメラではできない芸当だ。そしてXの画質ではISO3200でも充分大型プリントに耐えられる。
さらに開放値F2.0というXF90mmのシャープな画質も大きく貢献している。フィルムシミュレーション、感度、アスペクト比、レンズ。持っている機材のスペックを自由自在操ること、使い切ることにより自分だけの世界が構築できる。夕立が上がった時、僕は400枚ぐらい雨の作品を撮っていた。それはあたかも絵師が、和紙に描いてはダメ、何十枚も書き綴り完成に到達した気分だった。ぜひ夏休み、皆さんも自分のXのスペックを思い切り使い切ってください。






by masabike | 2017-08-04 07:54 | Tokyo City | Comments(0)
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