ターニングポイント

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PENTAX67 SMC105mm FUJIFILM  Velvia

南オーストラリア シンプソンデザート 

撮影協力 カンタス航空

 砂漠の立ち枯れの木の向こうから、14夜の月が昇る。日中は50度を超える気温もこのころを境に,急激に下がり始める。深夜には10℃を下回る。砂漠は死ぬほど暑いか、寒いかだ。まさに宇宙のようだ。

この写真は写真展でもよく使用する。前回のミュゼふくおかの個展でも大きく展示していた。そして一番使われていたのは、富士フイルムのフィルムのカタログの表紙だ。かれこれ10年近く使っていただいた。 67判ならではの質感、遠近感、空気感、奥行き感。それに加えて、ベルビアでしか再現できない、ベルビアワールドの世界。多くのランドスケープフォトグラファーが、このベルビアに育てられたと言っても過言ではなかった。ベルビアが出るまでは世界のほとんどのフォトグラファーが、カラーではコダックのエクタクロームかコダクローム、モノクロならばトライX。カメラはニコンかハッセル。三脚はジッツオかハスキー。これがプロの組み合わせだった。富士フイルムのフィルムを使用するプロは3割程度だった。しかし、90年代前半、ベルビアが出ると、フォトグラファーの世界では革命が起きたように一変した。特に広告業界では顕著だった。印刷所もクライアントも「撮影は富士フイルムのベルビアを使って」と指定するぐらいだった。ちょうどフィルムからデジタルになる変化の時のようだった。とうとうコダック系のH現像所でもベルビアの現像や販売を始めなければ、業界のオーダーにこたえられなくなった。それほどベルビアは神フィルムであり、困った時のドーピングフィルムであり、色の抜けが一気に変わったフィルムだった。僕も当時、家に大量に在庫していたエクタクロームを、アマチュア写真家に、大安売りして処分した。それほどだった。ある意味、僕のプロとしての経験と作品はベルビアと富士フイルムに育てられたと言っても過言ではない。



 そして19962月、酷暑のシンプソンデザートで今日の作品を撮影した。2008年アドビアドベンチャーにFUJIFILM S5proで参加したのをきっかけにデジタル化に本格的に移行した。割と遅めの移行だった。その理由は、どうしても中判+ベルビアの世界観が捨てきれなかったことだ。35mmNikon+FUJIの合作S5proそののちD700Nikkorナノクリスタルレンズの登場もあり、デジタルを中心に移行しましたが(それでもNikon F3&F6でのベルビアやアクロスでの撮影は現在もしております)中判は、今の今でもPENTAX67+プロビア&ベルビア&アクロスでしております。その理由は、フィルム中判で撮る世界観が、デジタルでは再現できないからです。どうしても67で撮ったフィルムの世界観が忘れられなかったです。

 でも920日の深夜、ドイツから届いたネットの情報は衝撃でした。FUJIFILM  GFX発表です。しかも新レンズシステムで。これでPENTAX67+Velvia &Provia&Astiaの世界観が再現できることになりました。しかも感度も自在にいじれる。大雨のジャングル、マイナス30度の流氷原、砂塵舞う大砂丘での撮影でも思いのままの世界観が撮れる。まさにEvolutionRevolution。これでもう一度、安心してあの世界観が撮れる、そして更に進化した形で撮れる。今僕の心は興奮している。頭の中はGFXを持って、どこでどうやって撮影し、どのように写真展をしようか。とても難しく悩み多いが楽しい悩みだ。心に思った色、世界観が撮れるこれほどフォトグラファーにとって幸福なことはない。

20113月 x100が発売された。僕はその時、何人かのフォトグラファーとX100の企画から参加していた。そして発売時にそのプロモーションも参画させていただいていた。さらにそのあと初のレンズ交換式XであるX-Pro1にもかかわり、そのプロモーションにも参加させていただいていた。でも多くのプロカメラマンは「所詮、APS-Cサイズでしょ」「レンズやアクセサリーないよね」「仕事ではつかえないカメラだよね」と言われ、何人家からは「相原は富士フイルムと心中するの?悪いこと言わないから手を引いた方がいいよ」とさえも言われた。でもそのxの持つ色の世界観、それはどうしても捨てきれないものだった、さらにX開発陣とプロ担当や富士フォトサロン担当の方のXに対する熱意、そしてその背水の陣の危機感が、打ち合わせの度に伝わってきた。だからその気持ちに応えられるような、作品を撮りつづけようと思った。


 そして920日 世界最高峰画質をうたうGFXのニュースを聞いたときとてもうれしかった。自分たちが参加したX1005年半でここまで成長したのかと。あとはカメラの成長にあわせ。自分の感性と視点と集中力をより切磋琢磨しなければと思う今です。ついついGFXでうれしくなり長く書きましたが、本当に作品制作のターニングポイントが来たことを痛感しました。5年半の進化を体と心で感じています




by masabike | 2016-09-21 19:52 | カメラ | Comments(0)
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