写真文化とカメラ

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先日二つの写真文化にかかわる展示を品川で見た。一つはニコンミュージアムでの「亀倉雄策と歩む」展、もう一つはキャノンギャラリーでの「日本スポーツプレス協会40周年記念報道写真展」。2つともとても、見ごたえがあり、かつ写真の文化というものを肌でひしひしと感じた。

 亀倉氏は言うまでもなく、Nikon F並びにニコン関連印刷物のデザインだけではなく東京オリンピック(1964)や日本万国博覧会のポスターでも知られる、日本いや世界トップクラスのデザイナー。氏のデザインは格調があるとともにアイキャッチも優れている。もし彼がニコンFnoデザイン等をしていなかったら、いまのニコンとニコン神話が生まれただろうかと思うぐらいだ。そしてそのデザインしたカメラ、カメラのパッケージ カタログ、取説。すべてのカメラマン、そしてお客様に箱を開ける喜び、興奮、そして写真を撮る喜びを上着く且つ、生まれながらにしてニコンFは神話と伝説を作り出したと思う。亀倉氏のデザインセンスもあるが、氏がカメラの奥底に潜む哲学、そして使う写真家達の気持ちをよくくみ取っていると感じる。そして当時のニコン技術陣の情熱をこのパッケージデザインに込めたのではないかと感じる

 そしてニコンミュージアムに展示している1950年代前半の亀倉氏のニコンのポスターを拝見すると、今現在そのポスターが量販店やカメラ店の店頭に張られていても、何ら古さを感じない。良いものは時代を超越する、それを感じさせられた。それは写真作品も同じだと思う。目先の流行やウケ狙いで、撮られたり、必要上のエフェクトをする作品は、時の流れの奈落の渦の中に沈むだろう。僕は自分の作品を、その奈落の渦の奥底に沈ませたくない、時の流れを乗りこえ永遠に残せる作品を目指したい

そしてキャノンギャラリーでのスポーツ写真展も、奇しくも東京オリンピックのとき撮影された、中谷氏の作品から始まっている。当時は一発勝負の撮影の時代、よくこのアングルに想い切れたと感心するものが多い。そして数々の歓喜と悲劇がアスリートの内面を写し撮る作品群で埋め尽くされていた。今回はキャノンギャラリー1階と2階のぶち抜き展示。見ごたえ充分。過去の自分の歴史や思い出と照らし合わせてみると感無量のとても素晴らしい写真展。キャノンという大メーカーならではの企画力を見せつけられた。そして写真家達とメーカーの共存する歴史の偉大さも。個人的にはスポーツ写真展では、コブラツイストを決めるアントニオ猪木のモノクロ作品と、マウンドの芝に長い影を落とすイチローの写真がすきでした

ニコンとキャノン、この2大メーカーが時を同じくして60年代を中心とした写真の文化にかんする展覧会を同時に見ることが出来たことにとても幸せを感じた。多くのスポーツ写真家が光と時間と格闘して撮った作品群、その中にはキャノンだけではなく亀倉氏デザインのニコンFもあっただろう。ニコン&キャノン、この2大メーカーが写真家とともに歩んだ道のりを昨日は感じた。そしてその長い道のりは、世界最高峰の映像を撮るとために2つのメーカーに哲学を生み出したと思う。時と光と影を一瞬にして写し撮る写真という表現に対する哲学なくしては銘機というものは生み出せない。そしてカメラ技術者たちの写真に対する思い入れも。昨今、写真には興味がないという技術者もいると聞く。そのような人たちが増えたらいままでのような歴史を写し撮る名機は生まれるのだろうか?真のフォトグラファーたちはカメラオペレーターではない。どのメーカー、どのカメラに哲学があり、写真が好きな人たちが作り上げているかかぎ分ける嗅覚を持っている。そして哲学や情熱を感じないカメラは手が伸びない、使わない。なぜなら、自分の一生を決めるかもしれない大事な一瞬を、信じられない、愛せないカメラには託せない。

作品というものはカメラと自分の心で作り上げる、わが身の分身でもあり子供みたいなものだ。愛情を感じられないカメラでは、身を削り、命を懸けてときには死と向き合いながら、情熱をかけて写真を撮ることはないだろう。いくらお金を積まれても。歴史の生き証人足る写真、自分の分身足る作品を撮るために、多くのメーカーそして技術者には情熱を持ち、写真を愛してカメラを創りあげてもらいたい。

おととしドイツのカールツァイス本社でプレゼンテーションさせていただいた。4時間以上にもわたるプレゼン。そこで多くのツァイス社のエンジニアやドクターと語り合った。話の多くは彼らがレンズと製品もそうだが、以下に写真を愛しているか、いかに写真を撮るのがたのしみか、そして写真を撮る哲学の大切さを語ってくれた。日本のカメラはドイツの光学機器を母体としてスタートしている。技術は学んだが、どうやら彼らの哲学を学び忘れた日本のエンジニアは多いみたいだ。日本製品をコピーするだけと、他国を非難するエンジニアもいるが、世界から見れば同じ穴のムジナかもしれない。哲学とそれを裏打ちする情熱、そして写真が好きということがなければ永遠にドイツのコピーから抜けられない。真似しただけかもしれない。

何度も言うが、作品を撮る為にそのために僕たちは命を懸けている。写真家にとり一番大切なことは情熱、だから写真がすきだという情熱をかけて作られたカメラでないと写真家の気持ちと化学変化は起きない。化学変化なくしてはもちろんよい写真はうまれない。技術者の皆さん、化学変化が出来るカメラを作ってください。そうでなければ・・・・その答えはエンジニアの皆さんが一番ご存知です。つまりそんな技術者は去ってほしいです


追伸

今、ニコン キャノンだけではなく富士フイルムスクエアでも奈良原一高の名作、王国など一連の作品も展示している。ぜひこちらも必見です。3回見ました。いニコン、キャノン、富士フイルム いずれの展示も入場無料です。ぜひお見逃しなく



by masabike | 2016-07-18 18:10 | 写真アート | Comments(0)
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