FUJIFILM Face book 5月4日より

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【和の「写心」《番外編》 By Masaaki Aihara】

「休息」 インドネシア ジャカルタ
FUJIFILM X-Pro2 + ZEISS Touit 1.8/32
フィルムシミュレーション Velvia/ビビッド

昼下がりのジャカルタ。路地から路地をカメラ片手に散策。
旅の面白さは、知らない土地でこの路地を曲がったら何があるのだろう? その好奇心。子供のころ、家から、自転車で10分ぐらい行った国道の向こうの世界は、僕にとって外国だった。ある日、友達と勇気を出してその国道を渡り、未知の街角の路地を曲がった時のドキドキ感は今でも忘れない。今の僕の旅はすべてその時の延長上。そして旅では、好奇心を満足させてくれるものは、いつも思いがけないところで思いがけない時にやってくる。

ジャカルタの仏教のお寺さんの中で、トイレに入って出てきた時この光景に出合った。初老の男性が、昼下がり食べ終えたお弁当を片手に居眠りしていた。しばしの幸せの時間。すかさず僕はシャッターを切る。今回の路地裏の撮影では、2台のX-Pro2のうち、1台はモノクローム+FUJINON XF16mm、もう1台はベルビア+ZEISS Touit 32mmにしておく。色の違いとFUJINONとZEISSの味の違いを楽しむためだ。この時老人のシャッの色と赤い布地のコントラストを生かすためベルビアのボディーを選んだ。6、7枚シャッターを切った時、仕事の相棒らしき人が来て、老人に「そろそろ午後の仕事だよ」的に声をかけてきた。そして彼も幸せの微睡の時間から、その日の糧を得る仕事の時間に戻っていった。

以前タスマニアで、ショナルジオグラフィック誌のブルース・デイル氏と仕事でご一緒させていただいたことがある。ある日彼がまさにこれぞナショジオと呼べる作品を、どこかタスマニアの田舎の室内で撮ってきた。今でもそれは目に焼き付いている作品だ。彼に「これはどんなシチュエーションなのですか?」と尋ねると「いや、田舎のドライブインで、トイレの場所をスタッフに尋ねたんだよ。そのあと用を済ませて、トイレから出ると、出口にトイレの場所はわかりましたか?と聞くスタッフが立っていて、その瞬間を撮った写真だよ」。それはタスマニアの木目の住宅の壁に、外からの逆光によって作られた、男性の美しいシルエットと影の伸びる写真だった。「えっ!?トイレに入っている時も写真を撮れる体制なんですか?」と尋ねる僕に「マサは(彼は僕をこう呼ぶ)はトイレの中でも撮れる体制ではないのか? 決定的瞬間はいつ来るかわからないなんだよ。これは僕のナショジオでの体験から得たことだよ。」
それ以来、トイレに入るときでも僕はいつでも撮影モード。

だからジャカルタで撮れたこの一枚はナショジオの伝説と呼ばれるブルースさんのおかげだ。小型で、静かで、そして心で見えた瞬間の色と光が再現できるX-Pro2とそれを支えるレンズ群。そのカメラが僕をサポートしてくれた。旅の出会いを決して無駄にしない、一生心に残る作品にしてくれるカメラだと僕は思う。

 




by masabike | 2016-05-07 10:40 | | Comments(0)
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