Concentration FUJIFILM X series Face bookより

Concentration  FUJIFILM X series Face bookより_f0050534_15113544.jpg

「Concentration」 桂花團治師匠
大阪府池田市アゼリアホール 三代目 桂花團治襲名にて

針一本を落とす音さえ禁じられる世界がある。伝統芸能の世界もその一つ。今年、4月に落語家の「蝶六改め三代目桂花團治」襲名披露公演を撮影させていただいた。昨年の4月からX-T1無音電子シャッターのテストも兼ねて師匠の襲名までの道のりを追いかけさせていただいている。それは師匠個人を撮ると同時に、落語という伝統芸能の世界全体を撮るということにもなる(ただし今は上方落語の世界のみ)
それは落語家だけではなく色物(寄席に出演する大神楽や奇術など)や寄席を支える三味線や鳴り物、お茶子さんも含めて落語の世界全体を撮ることになる。

そしてその世界で一番禁じられているのが「音」だ。特に響きやすいカメラのシャッター音はなおさらだ。余分な音ひとつで、落語家の噺の「間」も変わってしまう。客席で噺を楽しむお客様の迷惑になる。そしてなにより楽屋で出番を待ち、心を静め集中する演者たちの大きな妨げになる。だから寄席や能楽堂では「音」は一番の禁じ手だ。

4月26日、桂花團治の名で初めて高座にあがる師匠を追う。影のようにまとわりつき楽屋に。開演直前、楽屋には誰もいない。僕と師匠だけだ。70年ぶりに復活する名跡の襲名披露。そして初高座。部屋全体の空気が師匠の心臓と同じリズムで鼓動している。自分の心臓の音すら止めたいくらいだ。花團治師匠が、鏡に向かい羽織の紐をしめ、気持ちを集中させていく眼に強い光が宿っている。その時と光を捕獲する。X-T1は高速連写モード。音はしない。ただ残りカットのカウンターだけが猛烈な速さで減っていく。静かなだけではなく小型のX-T1+FUJINON16-55mmはまるで忍者のように師匠の表情を盗んでいく。楽屋にカメラの存在感はない。消音ケースを使用したミラー式一眼レフでも音はする。そして何よりもその存在感が目立ちすぎる。

いままで撮れなかった伝統芸能の世界、それも楽屋の姿がX-T1無音電子シャッターにより初めて映像として記録される。写真にとって一番大切なことは記録性。それには思い出の色やグラデーションも含まれる。記録と記憶を撮れるのはX-T1の最大の武器。だからX-T1は日本の伝統芸能の歴史に大きく貢献するだろうとこの時確信した。シャッターを切り終わると、花團治師匠が舞台に向かう。割れんばかりの拍手に包まれて。

 
桂花團治師匠の襲名披露公演が、8月2日に東京国立演芸場で開催されます。
「三代目桂花團治」、初の東京お目見えです。






by masabike | 2015-07-14 15:12 | 落語 | Comments(0)
<< 驚愕のFUJINON 90mm F2 驚愕の解像力 New FUJI... >>