太古の朝 FUJIFILM Xseries japanより






「写心」《番外編》 By Masaaki Aihara】

「太古の朝」
オーストラリア・タスマニア州 クレイドルマウンテン国立公園(世界遺産)

FUJIFILM X-T1 + FUJINON XF10-24mm/4
フィルムシミュレーション ASTIA/ソフト

タスマニアは"40Dgrees South"と呼ばれる、南極からの暴風雨の影響下にある。一日に四季があり、時には雪も降る。オーストラリア=トロピカルな国というのは間違いだ。タスマニアは目まぐるしい気候変化が、毎日撮っても撮り飽きない撮影モチーフを提供してくれる。6月の半ば晩秋(南半球なので季節が逆)のクレイドルに行くと、朝晩は氷点下を割る気温が続く。

快晴の夜明けにいつもの森の中に行く。この森は自分の家の次に僕が一番時間を費やしているところ。いわば自宅の離れた庭みたいなものだ。タスマニアの森は世界有数の太古の森。恐竜時代と変わらない景色を保っている。古い森だからこそ、人知を超えた精霊たちが住んでいる気配すらある。

そんな荘厳な森の夜明け前のブルーな世界。白く凍った植物たちが「おはよう」と挨拶をしてくれる。特に蓑をかぶったようなスタイルのパンダニは恐竜時代から生き続けている「生きている化石」と呼ばれる植物たちだ。彼らとも毎朝かかさず挨拶をする。
撮影で一番大事なことは、そこの空気とシンクロすること。テクニックはシンクロした結果を画面に残すために必要な最後のスパイスみたいなものだ。自然の写真にテクニックは優先ではない。毎日、森も山も木もそして太陽も月も語りかけてくるものは異なる。その語りかけてくるものを感じ、大地と宇宙とシンクロして撮らせていただくもの。「おれが撮ってやろう」なんて思ったら、この世界は心を閉じてしまい、シグナルをくれない。そしてその微妙なシグナルとシンクロして撮るのに一番大事なことは、心の映像にどれだけカメラがついてきてくれるかだ。「人馬一体」という言葉があるが、X-T1は僕にとって人馬一体・・・いや人カメラ一体のシステムだ。この朝は凍りついた植物の霜の白さと朝の空気の緊張感を出すためにASTIAモードにして、色もフラットな設定にした。

この作品で一番のポイントは凍りついた植物の霜の白さの中に、うっすらと緑が出てくること。緑と白はフィルム時代から色の再現が最も難しい色。だから作品を左右するのは、白が一番白く抜けることと、白に縁どられた緑が自然に出ること且つ、夜明けの重々しさが緑に残ること。X-T1のセンサーは僕の心の中を、まるでコピーしてくれたように作品にしてくれた。撮影に夢中になっていると、うっすら凍りついた頬が暖かくなった。森の間から太陽が昇り、僕の顔に自然のエネルギーを注いでくれた。日が昇ると太古の森の朝のドラマはもうおしまい。あっという間の2時間だった。
撮り終わり機材を片付けた後、正面のパンダニに手を合わせ「今日も撮らせてくれてどうもありがとう」とお礼を述べる。この朝に撮った作品は40GB。すべての作品が僕の心の中のコピーだった。それはつまり僕の心を中継して自然の心とX-T1がシンクロしてくれたことにもなる。
写真を撮る人なら誰もが思う「心に感じたままに撮りたい」、でもそれができない。もしあなたが、心の中の見た、感動した景色を撮りたいと望むならば、答えは簡単だ。X-T1のファインダーを覗くことを勧める。そこに見えるのは紛れもなくあなたが心に感じてイメージした世界のはずだ。

 


by masabike | 2014-12-18 00:03 | タスマニア | Comments(0)
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