Nikon Df+Nikkor28mm MF
奈良原一高 写真展王国
(修正加筆箇所を文字色を変えてあります)
昨日国立近代美術館で奈良原一高氏写真展「王国」を拝見してきました。まさにこれぞ写真の力という作品展でした。一枚一枚の作品に力と哲学があふれかえっています。構図とシャッターチャンスが完璧なのはもちろんですが、修道院と刑務所という特殊な環境での制限と少ない撮影チャンスを、鋭い観察力と視点で見事にこなしています。学生時代に見て感激しましたが、さらに齢を重ねてみると、若いころは気が付かなかったことにたくさん気が付かされとても勉強になりました。この1年で見た最高の写真展といっても過言ではないと思います。
撮影されたのは1956~1958,ちょうど僕が生まれたころだと思います。多分そのころ撮影したカメラはレンジファインダーのNikonだったのでしょうか?写真展の作品はすべてニコンさん収蔵だったものを、国立近代美術館に寄贈され、それを展示したものです。改めてニコンが世界の頂点のカメラを作るだけではなく、すぐれた作品を収蔵しかつそれを一般の人に見ていただくために寄贈されたということは、企業としての熟成度そして伝統とSpiritを感じます。まさに世界の写真文化の担い手だと思います。かつ1958年に奈良原氏が王国写真展を開催したのが、当時完成したばかりの富士フォトサロン東京でした。やはりここにも写真文化の担い手としての富士フイルムさんのすごさを感じます。まだ1958年頃はやっと戦後は終わったかと言う時代です。でもいまほど日本はまだ繁栄していませんでした。その時代にカメラやフィルム、印画紙そして作品などなどをつくる文化を担っていた2つの企業の姿勢に脱帽しました。
ただ昨日の個展を拝見して2つほど考えさせられたことがあります。デジタルの時代になり、より高感度より優れたレンズ群が存在するのに、この王国やその他の名作と言われる作品や個展等が出てこないのでしょうか?僕も含めて、季座に対する依存度が高くなりかつデジタルの時代でスピードが最優先で、内面世界で熟考しかつ集中して観察するという気迫が薄れているのかもしれません。現在のデジカメはもう進化はいらないとさえ思います。それよりもフォトグラファーのメンタルをどうするかが最大の課題だとも感じました。そしてもう一つの考えさせられた点は、これだけの作品群を寄贈したにも関わらず、展示会場と図録にニコンに対する美術館のお礼の賛辞もしくは在る意味メインスポンサーなのに図録のご挨拶と年譜にはニコンさんの寄贈が明記されておりますがロゴマークや社名がそれにふさわしいサイズでなかったことです(もし何らかの意図でそれがないとしたら、それは外部の人間が知ることではないので関係者の皆様には大変申し訳なく思います)でもこの日本アート界の宝と言うものを寄贈してくれたということはNikonと言うブランドのすごさを感じました
奈良原一高 写真展「王国」絶対に見逃すべきではない写真展です。特に「ゆるい系写真」の方は絶対に、寝る時間を削ってでも見てきてください。まさにこれがフォトグラフィーです。さらに言うならば、あなたがアートに興味がなくても写真が好きではなくても、この個展だけは絶対に見るべきです。きっとあなたの人生に残る映像を見せてくれます。
展示作品の撮影は、内覧会でしたので特別に撮影許可を得ております。通常の公開日は撮影禁止ですのでご理解ご注意お願いいたします