伝説

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NikonF2 Nikkor20mm FUJIFILM 64T


よく写真関係のパーティーに行くと気が付くことがある。いがいと写真家の人たちやメディアの人たちが、一眼レフやプロ機をぶら下げてこないこと。会場での記念写真や、もろもろの写真はコンデジか写メで撮る写真家やメディアの人たちがほとんど。理由は簡単、各カメラメーカーや写真関連産業の人たちが入り乱れてくるのでそこで配慮をしてというのがほとんどの意見。もし自分が仕事をいただいているメーカーさん以外のカメラや、これから新たなクライアントを獲得したいとき、下手に本気のカメラを持っていきそれがライバル関係や、利害関係にあったらえらいことなので。いぜんあるカメラ雑誌のパーティーに初めて来るフォトグラファーさんに「仕事機材はもってこないように」といったのにあるサードーパーティーのレンズを持ってきてボディーメーカーの人からヒンシュクを買っていたのを見たことがあります。ただただそんなパーティーの中で唯一許される例外が一つだけあります。「ライカ」です。


これだけはどこに持っていこうが、どこのカメラorレンズメーカーの仕事をしていようが許されます。そしてオフィシャルなカメラメーカーさんの会議でも、ライカのことだけは許されます(もしほかに許される可能性のあるカメラがあるとしたら独断と偏見でローライとハッセルとニコンFかSPぐらいかもしれません。でもライカほど絶対的ではないかもしれません)

先日もある写真関係の会議で、知り合いのフォトグラファーが「いやーモノクロ専用のライカ買ってしまいましたよ」と言っていたので「モノクロしか撮れないんでしょ?それで80万円ぐらいなの!!驚き」というと「でもライカだから」との答え。ほかにも「ここの操作性が悪い」「レンズのこの部分が良くない」とライカ使いのフォトグラファーたちは口をそろえて文句をいう。でも最後にはかならず「でもそれでも許しちゃう、だってライカだから」。ライカを使っていない僕にはよくわからないが、最近許せる理由、ほかのメーカーさんも文句を言わない理由が少しだけわかった気がする。それは”Legend伝説”

単にブランドだけ、高額商品という金額だけではでは伝説は生まれてこない。歴史に裏付けられた実績と経験が伝説を生み出していると思う。過去の数々の名作と呼ばれる写真作品や、歴史の証人となる写真の多くがライ によって撮影されてきた。太平洋戦争中あの日本の撃墜王と呼ばれたゼロファイター 坂井三郎氏もコックピットにライカを忍ばせ空中で撮影していたとも聞いたことがある。その何十年の言う歴史と実績が、メーカー間の垣根を乗り越えてまで尊敬される伝説を作り上げたといって過言ではない。

2008年僕はもう一つの伝説と出会ったことがある。”Legend of National Geographicナショジオの伝説”と呼ばれた人物、ブルースデイルさん。約30年間に3000枚とも4000枚ともいえる作品がナショジオの誌面を飾っている。近年発売された、「ナショジオベスト50」にも彼の作品は入っている。お会いしたのは2008年4月タスマニアのホバート。2週間に及ぶアドビアドベンチャー・タスマニアと呼ばれるライトルーム2のプロモーション撮影(別名カメラマン虎の穴ともよばれましたが)の会場でした。そのときアドビが世界から15人のフォトグラファーを選出し、そのなかにナショジオのトップというか、伝説と呼ばれるフォトグラファーとしてブルースディルさんを招聘しました。第一印象は謙虚、寡黙、そしてネバーギブアップ。

アドビアドベンチャーが始まる前、世界のTOP15人が集まるので緊張していました。でもタスマニア州政府や、オーストラリアの多くの友人や知り合いのフォトグラファーも「マサは15人の中で一番タスマニアを長く撮影しているから気楽に撮影したら、ほかの人に教えてやるよとかタスマニアのおすすめを、案内してあげる的で余裕じゃないの」と言われました。個人的にもタスマニアをもうその時点で10年以上撮影していたので、そんなに気にすることはないかなとも思いました。初対面の時ブルースさんから「君はタスマニアのスペシャリストなんだって?いろいろ教えてねよろしく」といわれ少しほっとしたのと、うれしいのと、油断しました。アドビだから当たり前ですが撮影はオールデジタルです。でも僕はその時これだったら、少し自分のフィルムの作品も撮っておこうとおもい、出たばかりの富士フイルムさんのクラッセでもDAY1は撮影しました。でもその夜ブルースさんの作品をすべて見せられ自分の考えが、大きく間違っていたのと、甘かったのと、天狗になっていたのが思い知らされました。彼が飛行機から降りてすぐ撮った写真、そしてホテルに来るまで、さらに僕と別れてからホバート周辺で撮影をしたスナップ。そのどれもがナショジオのグラビアというか表紙を飾ってもおかしくない写真でした。かれのPCのモニターから魔法のように出てくる素晴らしい作品群。まさに伝説と呼ばれる男の伝説たるゆえんがわかりました。はじめてきた土地、時差は15時間以上、30時間飛行機に揺られ地球の反対側で季節も逆の見も知らない場所についていきなりこれを撮るのか!と思い知らされました。世界のどこに行っても撮れなかった、知らない土地だったからでは済まされないナショジオのフォトグラファーのすごさを垣間みました。さらに追い打ちをかけるようにPC画面にくぎ付けになっている僕に、ブルースさんは「マサそういえば、今は日本は桜の季節だろ、桜をバックに撮ったうちの孫の写真見る、ポトマック川の桜をバックに写メで撮ったやつだけど?」と見せられた写メの写真を見てびっくり、そのままナショジオの表紙になりそうな写真。彼がトイレに行ったすきにこの携帯ごと盗んでいこうかと真剣に考えました。機材は関係ない、全く関係ない、視点と鋭い観察力、ち密なフレーミング、そして熱いハート。自分の足りない部分が死ぬほどわかりました。そして彼に写真はいくつから始めたと尋ねると「5歳かな」と言われ、グウの音も出なかったです。

そしてアドビの2週間、ブルースさんがほぼ毎日僕と同じくらいメンバーの中で一番早く起きて、メンバーの中で一番遅くまでPCモニターで作業をしていた、
。日本の先生とよばれる写真家みたいに夜は宴会だ!!という発言は1回も一言もなかった。以前、ヘルムートニュートンのお弟子さんをやっていた友人のフォトグラファーが師匠からおすわったことで一番大事なことは「世界で一番早くベットから起きて世界で一番遅くにベットに入るカメラマンしかこの世界では生き残れない、名を成せない」という一言だった。

伝説は努力と時間と辛抱強さが作り上げるとこのとき実感しました。話を最初に戻すとそしてプロカメラマンたちが機材を選ぶときに、意外と大事に考えるのがこの伝説です。伝説は信頼の証、成功の証です。作品作りの成否、仕事の成否、そしてフォトグラファーはカメラでお金を稼ぎ生活がかかっています。だから最後の大きなよりどころとしてこの伝説というのを大事にします。だから僕も仕事のメイン機材はこの30年近くニコンです。やはりNASAのカメラ、宇宙に行ったカメラという伝説というかもう神話はとても機材の使うときに大きなよりどころになります自分も伝説に近づけるように精進します。

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by masabike | 2012-07-14 08:31 | 写真アート | Comments(8)
Commented by ich at 2012-07-14 18:11 x
あのアドビアドベンチャー、マナブさんの素晴らしいレポートを何度となく読み返しました。正直なところ、写真家をそれ程知らない私ですが、ブルースデイル氏は最も尊敬するカメラマンの一人になっています。(^ ^)
Commented by JUNE-2012 at 2012-07-15 08:06
とっても為になるお話でした。ありがとうございます^^
私にはレベルの高すぎるお話でした。。ですが、下手でも写真を撮ることが大好きな気持ち、(わくわくしたり、ドキドキしたり^^)はずっと持ち続けたいなと思いました。
Commented by tes_music_system at 2012-07-16 19:24
じっくりと読んで・・・しっかりと心に刻み込みたい文章でした(礼)
Commented by BMW-GS at 2012-07-16 20:17
こんばんは

なるほどってお話またまたありがとうございます。
F2って調べたらとっても古い外観。
今でも現役なんですね。
Commented by masabike at 2012-07-17 22:52
ichさんへ
ブルースさんは人間的にもとてもすばらしい方です
Commented by masabike at 2012-07-17 22:52
JUNEさんへ
写真は気持ち95%テク5%ぐらいです
Commented by masabike at 2012-07-17 22:52
tesさんへ
ありがとうございます
Commented by masabike at 2012-07-17 22:53
BMWさんへ
Nikon F2は世界に誇れる日本の名機です
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