スクランブルに備えて

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いま、毎日 夏の終わりのたな卸し中です。ポジの整理、データーのバックアップ等の整理、そしてフィルム冷蔵庫の整理。我が家というか事務所には冷蔵庫が2つあります。1つは通常の食料品等のもの、もう一つはお宝を入れておくもの、そうカメラマンのお宝フィルムです。富士フイルムのポジフィルム(ベルビア アスティア プロビア)、モノクロネガ(アクロス、プレスト)そしてカラーネガのプロ400.それと某K社のトライX。常時ポジだけでも300本をキープしています(1日の撮影で多いと50本ぐらい風景でも使いますので)下手なカメラ屋さんより多いです。

わざわざ冷蔵庫を常備して買いだめしておくよりも、トヨタ看板方式で必要なときに必要なだけ買えばよいのに?と思われるかもしれませんがそれが大きなまちがえのもと。今では広告や雑誌の仕事もデジタルが多いですが、不動産等の高額物件や、ハイレベルのイメージ広告ではポジやネガが要求されます。そのためと後はもう一つスクランブルのためです。

スクランブルとは、急に夜遅くあるいは深夜に「悪いけど急に撮影お願い!しかもフィルムで」とか、急に雪が降ったり、雨や嵐、あるいは信じられないような雲など、2度と取れない自然の風景に出くわすとき撮影に行きたくても家にフィルムがない、ヨドバシカメラやビッグカメラは開いていない。もちろんネットで買うなんて間に合わない、そんな万に一つ、いえ10万回に一度の機会のために備えておくのです。それがプロだと思っています。カメラ機材でも同じです。通常の撮影ではうちのD700やF6&F3、S5proなどなど全てオーバースペックです。でお10万回に1度、100万回に1度そのスペックが必要になります、しかもそのような時は人生を左右する決定的瞬間だったりします。よくNikon F3Pが5Gや6Gに耐えるから使うというと、ほかのメーカーの人やアマチュアで笑う人がいます。でも知人のコンバットフォトグラファーはそのスペックが必要ですし、オーストラリアの奥地で何日も撮影や、空撮でめちゃくちゃな撮影のときそのスペックに裏打ちされた神話が必要になりますし、それがファインダーの中の世界に安心して集中させてくれるお守りになります。

以前にもブログに書きましたが、昔々、中学生のころバレーボールをやっていまして当時の金メダル監督 松平さんのバレー教室を見に行ったことがありました。そのとき男子バレーのお家芸はフライングレシーブ。見た目の迫力は凄かったですが、それでもなかなか得点に結びつきません。そんな時松平監督が見学の中学生に「フライングレシーブが得点に結びつく可能性は、1000回に1回あるかないか、でもその1回の1点が、オリンピック決勝フルセットの戦いでファイナルセットジュースになるか決勝点になるかのときだったらどうしますか。その1点が運命の分かれ道。自分たちはそのために備え練習しています」という言葉が昨日の様に覚えています

だからフィルムのストックや機材そしもろもろほかの備えもしておきます。ただ上手に撮るだけでしたらアマチュアの人でもできるし、アマチュアのほうが上手な人もいます。ただプロでやるということはビジネスです。全てのことに対応しなければなりません。だから意外ときちんとサラリーマンをやっていた人が基礎を見につけ、さらにモチベーションがあればプロになれるときがあります。サラリーマンや仕事が嫌いで逃避で、好きな写真でプロになりたいという人はその万に一つの備えの気持ちがわからないのでプロのカメラマンにはなれないと思いますし、プロフェッショナルと呼ばれる仕事全般につくのは無理だと思います。必ずプロの仕事では泣きたくても泣けない、怖くても誰も助けてくれない自力本願のときがあります。撮影が始まってしまったらファインダーの中の世界は自分ひとりです。いくらモニターやポラがあっても光と影と時間と格闘するときは一人で孤独で孤立の戦いです。泣いてすむぐらいだったらいくらでも泣きます。それだけ逃げることができない世界、勝ち残るしか生き残れない世界です。

いま冷蔵庫を整理し、このフィルムでどうやって次のテーマを撮ろうかと、稲妻の光と音を受けながら事務所でイメージトレーニングをしている晩夏の午後でした 


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by masabike | 2011-08-26 17:02 | 写真アート | Comments(2)
Commented by kumimone at 2011-08-26 19:53 x
いつもブログのお写真や文章楽しませていただき、またプロとしての心構え、撮影技術等参考にさせていただいております。
ありがとうございます。
今まで、色々のプロの方が「プロとは」の解説をされていますが、私は今日の相原さんのコメントが一番分かりやすかったと思います。
ところで、このコメントと違いますが、昨日ついにGF670Wを注文してしまいました。
X100に続き、今年は相原さんに影響されて2台も購入です(笑)。
相原さんもよく行かれますが、私も奈良は好きな場所の1つで、9月の三連休に室生寺、龍穴神社を中心に撮影に行く予定です。
(カメラに興味が無く、土門拳さんも知らないころから好きです)
自分へのテーマは、X100、GF670W等単焦点でどんな撮影ができるかです。
(とはいっても、どうしても撮りたい時のためにデジ一には望遠ズームだけ付けて持ってきます)
今、仕事が忙しいので、GF670Wはぶっつけ本番となりそうで、初めての画角であり、どんな写真になるかドキドキ、楽しみです。

Commented by masabike at 2011-08-27 08:47
kumimoneさんへ
GF670W使いやすいので、ぶっつけ本番でもOKです。龍穴神社よいですよ!記事わかりやすくてとてもうれしいです
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