アウトバックの掟

 アウトバックはちょっとした不注意、ちいさなトラブルが命にかかわることを引き起こす。昔あるガイドブックのツーリングのアドバイスに「何とかなった北海道、なんともならないアウトバック」と書いたことがあるがまさに命がけの場所。意外と簡単に走れるよなんていう人もいるけど、あちらこちらに旅人を陥れる大きな罠がある。

以前ブログにUPした砂漠の夜空を撮影するのでキャンプして準備していると、車の音が聞こえた。ただランクルや大型の4WDバスの音ではなく小型車の音。バイクでもない。現れたのは小型のリッターカー。乗っていたのは20代のカップル。車は格安レンタカー会社のもの。通常オーストラリアでは2WDや格安レンタカーはアウトバックには行ってはいけない事になっている。行った場合は保険の適用外。
彼らはシドニーから来たらしい。降りてくると女の子の方はヒールだったので更にビックリ。降りてくると楽しそうに写真を2人で撮っている。シャッターを頼まれたので押しながら「この車じゃ危ないんじゃない?」と訪ねると「大丈夫だよ、水も持っているよ10リットル」僕は???だった。アウトバックでは一人10リットル1日分で持っていくようにといわれる。2人だったらもっと持ってこないと、しかもここは気温40度のうえ難易度が高いので40リットル持ってこないとやばいのではと思った。車の中をのぞくとサバイバルキットも予備燃料もなさそうだ。リッターカーのガソリンタンクでは砂漠の航続距離はギリギリ。しかもルーバー(カンガルーを跳ね飛ばすバンパー)もない。もう完全になめきっている。そうこうしているうちに彼らは砂漠のルートに消えていった

 翌朝、空撮のため砂漠を移動していると、道から外れたブッシュに赤い物体が転がっている。なんだろうと近づくと、くしゃくしゃになった車。しかもやったばかり。昨日の車だとぴんと来た。乗っている人はいないので誰かが救助したか、フライングドクターが来たかもしれない(アウトバックでは路肩に車が止まっていたら、必ず止まって生存ならびにトラブルを確かめるのが掟。だから撮影で路肩に車を止めているとみんなストップする)

屋根もつぶれているので2~3回点転がったみたいだ。どう見ても乗客は大怪我か死んでいるか。念のために記録の撮影をして、村に行ったらポリスにレポートしてみる。しばらくして砂漠の村でポリスに会い事故のこというと「知っている、昨晩の事故で80キロで3回点半転がった。砂でハンドルを取られたらしい。2人は生きている、ひどい状態だけど。フライングドクターでクーバーべディーの病院にいるよ。やつらはウンがいいよ、偶然農場のトラックが夜通ったから。 レンタカーだから大変だね。今週に入って2件めだよ。最近アウトバックをなめた旅行者が多いよ」と言っていた。80キロ確かに日本国内では高いスピードだけで、アウトバックの砂漠ではそんなにべらぼうに早いわけではない。ちょうどよいクルーズスピードでこれより遅いと、砂に取られて不安定になる。まさに運転経験未熟。最近感じるのだけどインターネットが出来てから、誰も彼もが簡単にアウトバックに来るようになった。自分のスキルとリスクを考えずに来る。それとGPSと携帯電話。GPSに頼りすぎて、そのあげくGPSが壊れたら現在位置がわからなく、携帯は圏外。パニックになり車を捨てて歩き回り挙句の果てにドライアップ(渇死)か行方不明で死体も見つからない。アウトバックでは車かバイクが壊れたら決して離れてはいけないと言う、鉄則がある。車やバイクはヘリコプターから見つけやすいが人は見つけられない(空撮で空から見るとそれはとてもよくわかります)

だから僕はいつもエマジェンシーブランケット(薄い銀紙で保温&熱からの保護)を持っている。いざとなったらこれに包まるか、テントの上にこれを張り救助を待つ。銀紙なので反射でよく上からも見えます(幸いなことにいまだかって使用したことはないです)。

以前バイクでツーリングのときHONDAさんからサポートで黄色いヘルメットとエマジェンシーキットをいただきました。そのとき僕は「すいません黄色のヘルメットあまり好きではないので他の色は無いでしょうか?」と訪ねると「黄色は、非常時ヘリコプターから見つけやすいんだよ、大地が真っ赤だからと」担当者から言われた。エマージェンシーキットには、最悪の場合骨折箇所に巻きつけて使用するエアーギブスも入っていた。これに僕は自分で鎮痛剤と抗生物出を入れて持ち歩いている。

話は戻るが、以前GPSが出だしたころ、砂漠でであった砂漠の達人みたいなおじいさんに「GPSを買おうと思う」と話したら「あんなものに頼ったら砂漠で死ぬぞ、きっちり大地を見定めて走るのが一番大事と教えられた」  GPSと携帯とインターネットに頼りすぎるとここでは命をおとす。アウトバックはバーチャルの世界ではない、リアルワールド、リアルアウトバックだ


以前ある出版社から良かれと思い、オーストラリアアウトバック経験者何人かでツーリングガイドブックを出版した。旅のお手伝いになると思ったのだが・・・。でもそのあとたくさんの日本人ライダーが、砂漠でトラブル、大怪我、行方不明、死亡事故が続いた。原因はド初心者、下手をしたら免許とって最初のツーリングがオーストラリアと言う人まで行ってしまったからだ。まさに量の増加は質の低下だった。それ以来僕はアウトバックの情報を出していない。行くべく人はどんなことをしてでも行くし、行ってはいけない人はどんな情報を出してもいけないからだ。

そういえばそのあとTVで猿岩石がはやったころ、砂漠のキャンプ場で日本人のヒッチハイカーに会った。基本的にオーストラリアはヒッチハイクの旅は禁止されている。(車の故障等の場合は除く)ヒッチするほうも乗せたほうも多くのトラブルがありやはり砂漠でレイプされたり、死体で見つかったからだ。

キャンプ場で出会った日本人は東京飯田橋の某理科系大学のヒッチハイククラブの男の子。オーストラリア人の爺さんと僕とでヒッチを辞めるようアドバイスした。なにせ彼の所持金は100か200ドルのみ、しかも地図は飛行機の機内誌の後ろにあるオーストラリアの地図のみ。まったくなめているとしか言いようのない。しかもサバイバルキットはおろか砂漠用の服装すら持っていない。(大型の防止や、風通しのよい服) 何で彼にこんなところでヒッチしているのか、辞めるように諭すと「僕死ぬことは恐れていません、先輩から男になってこいといわれました」と言い大学のヒッチハイククラブの旗を見せてくれた。クラブ員の寄せ書きがあった。有名大学が聞いてあきれます。彼は「よかったらランクルにアデレードまで乗せもらえませんか?」と聞くので「じゃ、ガソリン代をシエアしてくれたらいいよ」と言うと「え!お金とるんですか?」「当たり前じゃない、ここからアデレード2000キロ以上あるのでガソリン代も馬鹿にならない、レンタカー代は1日4万円かかるのだからせめて、ガソリン代ぐらい出してね」というと話は決裂した。ここは自力でしか生きてはいけない場所。他人の善意だけを頼り、自分で努力しない人は生きてはいけない場所。最後にぼくは「男になる前に、死体になるよ」と言ったそのあと彼が日本に帰ったのか、男になったのかはわからない。アウトバックはまさにそんな厳しいところ。今でも行くたびにとても怖いです。でも怖いからこそ大変だからこそ、アウトバックには優しい人たちが多いです。まさにリアルオーストラリアです

今回はマナブサン風に写真は最後にしました。


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by masabike | 2009-12-17 09:43 | アウトバック | Comments(12)
Commented by burg at 2009-12-17 09:58 x
世の中には星の数ほど写真が存在し、その大半が簡単に撮れた写真でしょう。
しかし相原さんの写真はこういうことの上に撮れた写真ですよね。
未来ある子供たちのためにそれを絵本という形を変えたもので紹介したり
本当に素晴らしい活動をされてると改めて思います。
Commented by ここいろ at 2009-12-17 11:51 x
はぁー、、、そんなところで撮影なさっているのですか。。。
masabikeさまにいつも天の守りがありますように。
貴重なお写真をありがとうございます。
DVDで静かに地球とお話しします^^
こういう生の情報、とっても貴重だと思います。
Commented by マナブ at 2009-12-17 17:49 x
この車でアウトバックはなめてますねぇ。
No body here だからいいけど、中にぐったりした人がいたらかなり焦りますね。

僕はマウンテンバイクで行こうと思っているので、安全です。
(まだわかってない人が約一名)
Commented by And.@cbr at 2009-12-17 19:59 x
想像を絶する世界ですね・・・。
相原さんが出発前にブログで「怖い」と書かれていた意味が
少しだけわかった気がします。
これからも、相原さんにしか撮れないオーストラリアを撮り続けてください。
心から応援しております。

「何とかなった北海道、なんともならないアウトバック」
納得です。
Commented by ankou-d700 at 2009-12-17 22:48
冬山登山と似ているところがありますね!
学生時代、粗末な装備(最低限)で北アルプスに行ってましたがルートについては綿密な計画は立ててました。

死なない為の装備、計画は最低限のルールです。

でもアウトバックに行きたい!と思ってしまう私です。。。
Commented by tes_music_system at 2009-12-18 07:40
ネイチャーは初めから無理とわかっているので観てるだけです?!
街を散歩しても腰痛になってますから・・・?!(笑い)
Commented by masabike at 2009-12-19 10:40
burgサンへ
ご理解支持ありがとうございます。これからもより一層精進いたしますのでよろしくお願いいたします
Commented by masabike at 2009-12-19 10:41
ここいろさんへ
地球とお話しすると、どんなときでも助けてくれます。話さないで撮影したら、いい写真は撮らせてくれません
Commented by masabike at 2009-12-19 10:42
マナブサンヘ
おっしゃるとおりです。でもまだマウンテンバイクで行くのなら保険かけてもよいですか?それともまた砂漠に行き再教育します?
Commented by masabike at 2009-12-19 10:43
And@cbrさんへ
昔のエイリアンの映画の宣伝文句ではないですが「ここではあなたの叫び声は決して聞こえない」です
Commented by masabike at 2009-12-19 10:44
アンコウさんへ
フェイルセーフシステムが一番大事です
Commented by masabike at 2009-12-19 10:45
tesさんへ
アウトバック行ってみますか?(笑)
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